瑛で7つのお題【瑛誕企画】
3.可愛い嫉妬
缶ジュースを二つ持って渚の待つベンチの方へ戻ると、何やら様子が違う事に気付いた。
何かがあいつの膝の上に乗ってる。
ニャーッ
…猫?
「あ、佐伯くん。おかえり〜」
「どうしたんだよ、その猫」
「ん?この子?若王子先生の猫だよ」
「は?何で」
「さっきここでバッタリ会ったんだけど、スーパーのバーゲンに行って来るからその間預かって下さい、だってさ」
「……あっそ」
俺は、溜め息と共に猫と戯れる渚の隣に腰掛ける。
……それにしても。
「…あのさ」
「なぁに?」
「ちょっと引っ付き過ぎじゃないか?その猫。なんかやらしいぞ」
「そうかなぁ?可愛いじゃない♪ね〜、いい子でちゅね〜よしよし」
「………………」
赤ちゃん言葉で猫に話し掛ける奴なんて、多分お前ぐらいだ。
…けど。
……なんか、ムカつく。
何でなのか分からないけど、面白くない。
…何となく。
「あれ?どうしたの佐伯くん。機嫌悪い?」
「別に」
「あ、もしかして妬いてる〜?」
「バッ…誰がっ!猫なんかに」
そうだ。こんなのはヤキモチでも何でもない。
ただ…ちょっと面白くないだけだ。
「ふふっ」
「…何笑ってんだよ」
「ううん。私達、何だかこうやってると家族みたいだなーって思って」
「はっ…?」
か、家族って…つまり。
そういう事…だよな?
何気なく言った渚の台詞が頭を回る。うわ…想像したら顔が…。
「そしたら、この子が私達の子供だね」
「なっ…」
無邪気な笑顔で、猫をあやしながら渚は言う。
冗談で言ってるのか、本気で言ってるのか。思わず俺は固まってしまった。
「…お前、自分で何言ってるのか分かってるのか?」
「うん。そうなったらいいなーって思っただけ」
「そ、うか…」
あまりにもあっさりと言ってのけるから、思わず頷いてしまった。
多分、今の俺の顔は林檎よりも赤くなってるだろう。
「可愛いね〜よしよし」
「……俺達の子供ならもっと可愛いだろ」
「え?」
キョトンとした顔で振り返った渚の唇を、素早く塞ぐ。
この先の未来の事なんて、分からないけど。
もし結婚して子供が生まれても、こうやって俺は馬鹿みたいに嫉妬してしまうんだろう。
…俺の方が子供みたいだ。
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