瑛で7つのお題【瑛誕企画】
1.手をつなごう
「ね、手繋ごうよ」
お前はしきりに、そう言う。
でも、俺の答えは決まって
「ヤダ。俺、手とか繋がない主義だから」
苦手だった。周りに見せ付けるように手を繋いで歩くカップルはよく見るけど、あんなのこっ恥ずかしくて耐えられない。
「どうしてよ〜?」
「だって、バカップルみたいじゃん。恥ずかしいだろ」
「でも、聞いた事ある?あのね…本当に両想いのカップルが手を繋ぐとね、お互いの考えてる事が分かっちゃうんだって」
「はぁ〜?」
何だよソレ。何処の誰が言い出したんだ、そんな馬鹿みたいな話。意味が分からないし。
つか、それが本当なら尚更手なんて…。
「隙あり!」
「あっ、おい…」
そんな事を考えてる間にも渚は、俺の手を取ってニヤニヤと楽しそうに笑ってる。
「ふふっ♪」
「お前なぁ…」
子供みたいな彼女の行動に呆れながらも、内心では結構嬉しかったり…いやいや、何考えてるんだ俺は。
ふと、さっき渚が言っていた言葉を思い出す。
「……どう?私の考えてる事分かる?」
「分かるかアホ。エスパーじゃあるまいし。…そう言うお前はどうなんだよ」
「うーん…」
唸りながら彼女は目を閉じて、暫く考え込む。
「ホラ、分からないんだろ?だから離せ」
「ちょっと待って、今考えるから!」
「無理。タイムアップ」
「もーっいいもん、絶対離さないから」
そう言って渚は口でイーッとしながら、繋いだ手をぎゅっと握り締める。
これだけ強く握られたら、離したくても離せない。
「ガキかよお前は」
「ガキだもん」
ったく…。別に俺だって恥ずかしいだけで、嫌じゃないけどさ。
でも、なんか…。
なんていうか。
「…佐伯くんの手、大きいね」
「お前の手が小さいんだ」
何故か隣でニヤニヤする渚を横目に、呆れ顔の俺。これじゃ、本当にバカップルみたいだ。
「……俺、お前の考えてる事分かったかも」
「えっ?なになに?」
「…俺と同じ事」
「何よそれ!訳分かんないよ〜」
安心するんだ。お前と手、繋いでるだけで。
いつもよりもずっと、心地いい空気が流れてるような気がする。
手、繋ぐのも悪くないって思う。
…ただし、お前限定。
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