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クリスマス2013
愛しい人

菖蒲と再会を果たして2年。

俺達の関係は変わることなく歩んできた。

ただ、再会をして菖蒲の告白を聞いて『もう遠慮はしない。』発言の後、菖蒲のスキンシップが激しくなったのは間違いない。

そしてそれを受け入れてしまう俺自身どうしたもんかと悩んでしまう。




餓鬼じゃない。

今年で30になった。

菖蒲に対しての自分の気持ちなんて解ってる。

恋なんて軽いもので片付けられるもんでもない。彼奴も同じくらい俺の事を思ってくれてんのも自惚れじゃないと思ってる。

でも踏み切れない。

俺は良い。

小さなbarの店長だ。

だが、彼奴はそうもいかねぇ。
若いながらも日本でも最大規模の極道の組長だ。

回りの目が許さない。


それは痛いほど解っていた。


現にこのクリスマスだって日に態々お店に御出になってるんだからなぁ。

「聞いてらっしゃるのかしら?」

綺麗な黒髪をセットして、赤いギラギラの口紅を塗った口をニンマリと笑みを浮かべ、だけどマスカラでバチバチの目は笑っていない赤いスーツに赤いパンプスの迫力ある美女は、菖蒲の婚約者さんのようだ。

「聞いてますよ。
しかしながら菖蒲と縁を切れとはお嬢さんも冗談が過ぎますよ。」

営業スマイルで笑って答えてやったが、相手は気に入らないようで後ろに控えている屈強な男二人に手で指示を飛ばす。

「兄ちゃんよ。
お嬢は無駄話をしに来た訳じゃねぇんだよ。」

「こんな小さな店何時だって潰せんだぞ?」

ニタニタと汚い笑みでカウンター越しに俺の胸ぐらを掴んでくる。

店で遠目から見ていた常連さん達から悲鳴が上がる。

仕方ないと、横から今にも相手を料理包丁で刺し殺しそうな勢いでキレている重さんに視線だけ向けて声をかける。

「重さん。
悪いけど、お客さんを外に出してあげて。
謝罪と今日の料金も入らないって伝えて。
後、バイトの子達も帰らせて。」

「だが、「重さん。」…チッ。解ってらぁ。」

俺の御願いに不満そうながらも直ぐに動いてくれる。

「クスクス。貴方余裕ねぇ?
菖蒲さんを当てにしてるなら無駄よ。
今頃私の御父様に呼ばれているわ。

私の御父様は代々龍神会を支えてきた家の長であり、菖蒲さんの恩人と言える人間。

流石の菖蒲さんも私の御父様には頭が上がらないのよ。」

美女が御家自慢をするが俺は鼻で笑った。

「誰が菖蒲を当てにするて?
菖蒲が信頼する自分の親父使って婚約者になろうなんて汚い女の為に菖蒲を動かすわけねぇだろ。


舐めてんじゃねぇよ。糞女。」

最後にニヤリと笑ってやれば左頬に衝撃がきて捕まれていた腕が外れ、後ろの酒が並べてある棚に激しく倒れた。


いってぇぇぇ。

十何年ぶりに殴られる衝撃は中々くるもんがある。

が、悪くねぇ。

俺は口の中の血をペッと床に吐き出して口を拭いながら立ち上がって笑ってやった。

何故か糞女も男二人も顔を赤くして此方を見て固まっているが関係ない。

俺はこんな糞女の為に身を引く気はねぇ。

だから、笑って言ってやる。

「てめぇらから手を出した。

覚悟しろや。」



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