story 今、 スタンは頭を抱えていた。学力の乏しい単細胞の中身では、難しい事を難しく解決など出来ないのだ。 部屋で唸っているとリオンが帰ってきたらしく、階段の音が近づいていた。ドアを開けるとベッドの上でうーんと悩ましげな声と共に黄色いものが座っている。 「何事だ、スタン」 「おかえりリオン」 一瞬のうちに考える事を放棄して、解放されたスタンはとりあえずおかえりの挨拶。シャルティエをディムロスの隣りに立て掛けると、リオンはスタンの隣りに腰を下ろした。 「まさか悩み事か?」 「え、あ……うん」 「お前に自己解決は難しいと思うが」 「やっぱり?」 兎に角僕に話してみろ、聞くだけ聞いてやる。内容によっては放棄。 スタンは暫し考えていたがちらりとリオンを見て口を開いた。 「ルーティがさ、間違ってるって」 「は?」 「俺がリオンを好きだって事」 どういう事だ。スタンが僕を好きだという事が間違いだとあいつは言ってた訳か? なぜ。 「…ひせいさんてき」 「あ?」 「って言ってた」 「………」 「どういう意味?」 じっとリオンの目を見つめてくるスタンは本気の目で、この単語の意味が解らず、何が間違いでその理由が理解出来ていないといった感じであった。 「非生産的とは」 「うん」 「何も生み出さない、無駄な事、まぁそんな感じだ」 「無駄ぁ?」 無駄って好きな事が?なんでどうして。スタンはぎゅっとシーツごと掌握った。困惑してる表情を見せる。 「何が無駄なんだろう」 「あの女にしかわかるまい」 「リオンは、どう思う。無駄なの、俺」 「僕はそういう風に考えた事は無い」 「何か生まなきゃダメなのかな」 「強制してやるのならそれはもう違う感情だ」 俺はただ、リオンが好きで、笑った顔とか優しい所とかいっぱいあって、それが無駄なんて思いたくない。こつんと額に何かが当たる。リオンが小さく叩いて自分の方に視線を向けさせる。 「スタン、僕が好きだろう」 「うん」 「…僕も、お前が好き、なんだろうな」 「……うん」 肩に僅かな重みが掛かって二人の間に隙間が消失する。リオンがスタンの首筋に顔を埋めて掠るように唇でなぞる。スタンはそれがくすぐったく恥ずかしくなった。耳元に寄せられたリオンの口から言葉が注ぎ込まれる。 「だが生まれるものならあるぞスタン、」 「え……?」 シーツを握っていたスタンの掌にリオンの掌が重ねられる。暖かく寄り添った二つの生命。 スタンが背中をベッドに預けていると、リオンはまた首元に顔を近づかせ柔らかく吸い上げた。息の上がるスタンの唇に自身のそれを重ねると、胸の中心がじんと熱くなるのを感じた。 今、愛が生まれている >>END [*前へ][次へ#] |