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story
されどこの夜は










本来ならば、きっと違うと思う。逆なのだと自分自身でもわかっているのだが、頭の中と衝動が全く別のものに分離したみたく、そんな夜だった。


窓の外では数え切れない程の星と雲が浮かんで、月が何処にあるのかこの位置ではわからない。暖かな暖炉があるこの宿は、酒場も少し遠い場所にあるので夜でも静かだった。後ろを振り向けば、リオンが向こうを向いてベッドに腰掛けている。顔は見えない、表情もわからない。けれどリオンが今、切なく苦しい感情に沈んでいるというのは理解出来た。

何を見て、何を感じて、そんな感情になっているだろう。

そんな事、リオンと全く別の人間である自分がわかる筈もなく、悪戯に時間だけが刻々と過ぎていく。




抱き締めて欲しい。宙をかく様に覚束無い動作でもいいから。
普通こういう場合自分から抱き締めて、何も言わずそんな雰囲気の儘というのがドラマの鉄則。だけども此処はドラマの中じゃあない。抱き締めたいという感情は浮かんでこなかった。
只、あの腕に抱き締めて欲しかった。

その切なさを分けて欲しいとは願わない。せめて気持ちを軽くだとか、そんな事は無理だとわかっているから。だから、触れた所からリオンの感情が自分に流れ込んで、同じ感情に埋め尽くされればいい。全く別の人間である俺が、今この夜一晩だけ同じものになりたかった。

後ろでは同じ輝きで光り合う星達が夜空で寄り添っていて、視界に映るそれが羨ましいと思った。




















(真横隣り合っている星は、本当は果てしなく遠く離れている事を、未だ知らない)




>>END

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