story
偽りでも愛
リオ←スタ
女の子が数人(今は3人ばかりであるが)集まると色恋の話しに花が咲くのは珍しくなく、今日は全員がいる時に話しの種が振りかけられた。それに渋々乗るのが男性陣の役割であるが適当にあしらったり、話し半分で聞いているのが一番。
格好良くて、お金持ちで、優しい男の人に愛してるって言われたいですね。
欲丸出しな話題に乗ったり突っ込んだり。
「金持ちならいるじゃない、1人は最後の全く当てはまってないけど」
ルーティがウッドロウとリオンに指をさす。うーんとうろたえだすウッドロウに反してリオンは無反応まんまである。
「俺は?」
「あんたは論外よ全てにおいてね」
「ひどっ」
せめて格好いいだけでも当てはめてくれたって。納得いかない回答に暫し考え込むが、金は無いし格好いいとも言われた事は無い、性格はわからないが確かに自分には無理な条件かもと思いだした。
「ウッドロウさん、ちょっと言ってみて下さい」
「え」
突然の提案であるが女の子達の視線は全て注がれた。拒否権は毛頭無しである。
「あ…、そういえばこの町に品の良い防具があるらしいな。私は少し見に行ってみる」
みんなが止める間もなく足早に宿を出て行ってしまった。ウッドロウはそのまま町へと消えていったのか。
仕方無しに女の子達はもう1人の対象者に触れる。
「じゃ仕方無い、リオン」
「何だ」
「愛してるって言ってみてくれ」
「ふざけるな」
あからさまに嫌そうな顔をして睨むリオンに引かず、ルーティ達も頑なに要求する。
「いいじゃない別に、面白そうだし」
「お断りだ」
「お願いしますリオンさん」
ついにリオンまで背を向けて今日泊まる宿の部屋へと足を返し始めた。
「僕が愛してるのはマリアンだけだ」
捨て台詞を残して。
言ったことは言った。人物を特定して。
「なにそれ」
「………」
女の子達は皆唖然。残されたスタンはリオンのその言葉が何か奥に詰まった感じがしていた。
みんな部屋に戻って(ウッドロウはまだ町にいるみたいだが)寝る準備に取りかかる。スタンは部屋に付いている風呂にお湯を溜めながらやはり先程のリオンの言葉が頭から離れられないでいた。
リオン好きな人いたんだ。しかも惜しげもなく愛してると言える人。貴女だけ。
ふと気が付くと湯が浴槽から溢れていた。ヤバいと思い直ぐに蛇口を捻る。少し溢れたお湯が足を濡らす。温かい。早く入ってもう忘れよう。
部屋にタオルを取りに行くとリオンが椅子で何かを読んでいた。気になって声をかける。が、大した話題も無く、さっきの事を振ってしまった。俺のバカ。
「マリアンさんて、リオンの家に居たメイドさんだよね」
「そうだが。それがどうした」
「いや、リオンが愛してるって言ってたから」
気になって。そうだ何気にしてるんだ俺は。さっき忘れようって思ってたばかりじゃないか。
「お前も言って欲しいのか」
「は?」
いやいやいや、何で。わからないけど気になってはいるけど違くて。
「スタン、愛してる」
どきり。
って鳴った心臓。口で息をするのもわからなくなって、わかる事は足先だけの温かさが顔に登り熱さに変わった。何今の。愛してるって、え、だってさっきリオンは
「嘘だがな」
「え………?」
嘘?何だよそれ。あれ、でもまあそりゃそうか。本当じゃないんだ。
まだ心臓どくどしてる。痛いくらい、本当痛い。何であの時言わなかったのに今は言うんだ。言ってくれなんて言ってないのに。しかも嘘だなんて。嘘。
じわりと目頭まで熱くなる。何かが奥から溢れそうになるのをぐっと堪えた。だって溢れてしまったら元に戻らないのだから。嘘でもそんなの聞きたくなかった。悪戯に惑わせないでほしい。どうして俺はリオンのこんな一言一言に揺さぶられてしまうのだろう。
「リオンのガキ」
そうだガキだ子供なんだ。リオンの顔を見ずに風呂に逃げ込んだ。温かい湯気さえ今の俺には感じないほど、身体中熱かった。
子供だから平気であんなこと言えるんだ。愛してるだなんて大切な言葉、リオンのあの口から、一瞬だけでも自分に向けられた時、確かに俺は喜んでしまった。
服を脱ぎ洗い終わって浴槽に入るとお湯が勢い良く溢れていく。あまり広くはない浴槽で洗った髪が湯に沈む。溢れて溢れて全て無くなってしまえばいいのに。俺ずっとリオンの事考えてしまってた。自分でわからない思いが溢れそうで、抑えっぱなしで、蓋がもう限界。でも今日その蓋が開くのだろう。だって限界なんだもの、俺は知っている、その溢れるものは止まる事なく流れ出でる。蛇口が見当たらない。溢れたらそれでお終い。
さうよなら俺の想い。
欲を言えばもう一度聞きたい。嘘でもいいから、嘘でいいんだ。
それがお前から与えられる愛であるなら。
>>END
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