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■ その他(小ネタ、質問、バトンなど)
□ 『動物は本能に忠実、という話』 〜3〜
※R18

「なあ、素直になれよ。銀時」
がなる銀時を鋭い光を湛えた目で睨み付けながらも、そう言った土方の声は空恐ろしいほど穏やかだった。
「ぎ、銀時言うな! つーか、ひ、土方っ、」
「ああ?」
「な、なんでおめーがンーなモンおっ勃ててんだよ!?」
その問い掛けにすぐさま答えることはせず、腹に一物を抱えたような顔で土方はゆっくりと口角を上げた。
「―――ったりめーだろーが」
「な、にが……?」
「惚れた相手がヤりたくて自分で自分を慰めてんだぜ? しかもケツに尻尾ぶっ刺して。ンなとこに出くわして、おかしくならねえ男が何処に居るってんだ、ああ?」

いやいやいや、おかしくならねえ男≠チて、出くわす以前におかしい≠ゥらね、おめー。
マヨの直接吸引とか、猫に対するマヨ虐待? あと惚れた相手≠チて男の俺のこと言ってる時点で既にもうおかしい≠フレベルマックスだから、おめー、―――って……、

「え? ―――惚れた……」

……相手?

ハトが豆鉄砲を食らったような顔をして固まった銀時の鼻の横に背後から口の端より涎を垂らした土方が顔を寄せた。
「してえんだろ?」
濡れた舌が銀時の頬を下から上へと舐め上げる。
「ヤっ、」
「なあ、今てめーん中に入ってるコレよりヨくしてやっから」
握っていた尻尾を前後に動かしながら土方が銀時の耳に甘く噛み付いた。
「あっ、」
「ヤらせろ」
「い、ヤだっ……、はぁっ、」
与えられる快感に耐え切れず、銀時はうつ伏せた体制で頬を地面に擦り付け、全身を震わせながら手で草を引き抜いた。後ろの穴を尻尾でかき回される度、規則正しい律動に合わせ高く突き上げた尻が揺れる。
「ヤ……だっ、ひじ、かたっ、頼む、止めっ」

うわ言のように繰り返される拒絶の言葉に背後で男の纏う空気の温度が冷ややかなものへと変わった。
「てめえ……、決まった男が居るな?」
嬲る手を止め、土方は感情の篭らない声で訊いた。
「答えろ」
「……るっせ」
「居るのかどうか答えろ!」
「……答え、たくねえ」
銀時の返答に土方がウーっと低い唸り声を上げて牙を鳴らした。
「そーかよっ。―――上等だ」
吐き捨てるように言うと、土方は有無を言わさず銀時の尻から尻尾を引き抜き、柔らかい体を乱暴に転がして仰向けに寝かせるとその上に全体重をかけ圧し掛かった。
うっ、と苦しそうなくぐもった声が銀時の口から漏れた。
「誰だ!? 名前を言え!」
「いっ、言ったらどーするんだよ!?」
搾り出すような物言いにも土方は動じることはなく、少しの間考えてから、
「その相手をブッ殺す!」
と不敵に笑った。

マジかよ、コイツ……。

銀時の赤い瞳が揺れた。


無骨な手が腹をそっと撫で上げ、硬い爪が複数の乳首を順番に掠った。
「あ、」
下腹部の奥がズクリと重く脈打った。内に篭ったままの、まだ吐き出していない熱が寸刻の間もなく銀時の全身に火を付ける。
「んっ」
薄い土方の舌が銀時の口を幾度も幾度も優しく舐めた。
「あっ、」
「甘えんだな」
「ひじ、かた……」
「てめえの口、すげえ甘え。匂いも、甘ぇ」
「……」
「したかった」
混乱した銀時の脳裏に、
「てめえの顔、見る度に、触れたくて触れたくて……、堪んなかった」
土方の声が染み渡る。
「俺にしろ」
「……えっ?」
「俺にしとけ。俺なら今みてえなコト、させねえから。てめえん中、いつもいっぱいにしてやるから―――」
土方が開きっぱなしだった銀時の両足を持ち上げて更に大きく左右に開いた。
「土方っ!」
弱弱しい抵抗を肯定と取った土方は、そのまま恍惚とした表情を浮かべ腰を進めると、限界まで膨らんだ欲望の塊を一気に銀時の中に突き入れた。
内壁を押し開き土方が入ってきたとき、銀時が艶やかな声を上げて小刻みに腰を振った。その動きに合わせ、土方が本腰を入れて突きを始めた。
「あっ―――」
「銀、時っ」
感嘆の悲鳴をあげた銀時の名を呼んだ土方の声は凄艶な色気を含んで掠れていた。
人間よりも熱いお互いの体温が興奮をより一層高めていく。銀時の中で土方の熱塊が体積を増したと同時に挿入した性器の根元が二度と抜くまいと栓をするかのように一際大きく膨張した。
「銀時、銀時っ」
眉根を寄せ、凶暴な目で見下ろしてくる土方に内部から壊されるのではないかと思えるほどの早いスピードで責め立てられる。
息が出来ない。
「ん―――」
「息、詰めんな。力抜け」
「ぁっ、む、り。あっ、ひじか、た」
恐怖を感じるほどの快感に銀時は鈴を張ったような瞳から一筋、涙を流した。
「悪りぃ。止まんねえわ」
「やだ、土方っ、……怖、え」
高所より落下しているかのような未経験の感覚に銀時が背を戦慄かせ土方に縋った。
「すまねえ」
銀時の太腿を抱え持つ手のひらが汗で湿り、じっとりと銀色の毛を湿らせる。
「すまねえ……、でも抑制がきかねえ、っ。犬の、本能ってのも、ある、かもしれねぇ。―――が、てめえが相手だからだっ。

猫だろうが、何だろうが、中身がてめえだと思ったら……、てめえ抱いてるって思ったら、……身体中……、細胞の一つ一つ、神経の1本1本、頭ん中も、全部、何もかもが、歓喜に震えて……、もっと、大事にしてえのにっ、あっ、

こんなの、……知らねえっ」
「ひ、土方っ、」
「銀時っ―――」
二つの身体と意識が溶けて混ざるような錯覚に襲われたとき、「イくっ」と言ったあとの土方のくぐもった呻きに引き摺られ、銀時が甘い喘ぎを漏らしつつ堰を切ったように溢れ出した熱い奔流を土方と自身の腹へと放った。


前から一度、後から一度交わったあとは覚えていない。
何度か銀時は意識を手放し、しかしその度に容赦ない土方の突き上げに呼び戻された。
行為を終え、背後からぐったりした銀時の身体を抱き込んでいた土方が、ぬかるんだ熱い穴からそろそろと性器を抜き取ろうとすると、銀時が切なげに喘ぎ、出て行く先端を名残惜しげに締め付けた。
「てめぇ……、まだ足んねーのか?」
肩越しに声を殺しながらも土方が笑ったのが伝わってきた。
「違げーよっ、バカヤロっ!」
「違げーことねーだろーが。この淫乱」
「俺が淫乱ならてめーは絶倫だ。バーカっ」
銀時から返される言葉にいつもの力はない。常ならば歯を剥き出しにして米神に青筋を立て、食って掛かってくるはずが―――、
今は気だるげに白銀の背を凭せ掛けてくる。

愛しい。

堪らなく愛しい。

場の空気に流され強引に身体を重ねてしまったものの、土方が秘めてきた今までの想いに嘘偽りはない。
タンポポのような首筋に鼻を押し付け、後から抱く腕に力を込めた。
「……んだよ?」
「なあ、銀時」
囁くように濡れた声で名を呼ばれ、訝しげに首を回し銀時が土方を顧みた。
「もしも人間に戻れたら……、てめえ俺と付き合え」
「……なに、その上から目線? なにその命令形?」
「物凄げえ乱れっぷりじゃねーか。どんだけほったらかされてたんだ、てめーの男に」
「てめえだってどんだけヤってなかったんだ? ガッつきやがって。もう俺のタンクん中、空っぽだよ。今絞っても一滴の雫も出ねーわ。犬に見えてっけど、猿じゃねーの、おめー?」
「しょーがねーだろーがっ」
「なにがだよ?」
「かなり溜まってたんだって。……てめえに惚れてるって自覚して以来、他の誰ともヤりてえなんて思えなくなっちまったんだよ」
耳元で喚くように言った土方のその言葉に銀時の赤い目が零れんばかりに見開かれた。

半分瞼が落ち、密集した旋毛に覆われ、そのため横広がり気味に見えていたふてぶてしい顔が瞬時に可愛らしいものへと変化する。
「……おめー……、マジで?」
短い沈黙が落ちた。
土方という男は遊女が挙って自分を買ってくれと赤い格子からその意思表示に火の付いた煙管を差し出すほどの伊達男だと聞く。色町を歩けば吸い付け煙草の雨が降る。
増して今まで同性が好きだという噂は耳にしたこともない。
ではなぜ、
「なんで、俺……?」
「……知るかよっ。自分でも分かんねーけど、てめえに惚れた。だから、今付き合ってるヤツと別れて俺と付き合えっつってんだろ!」
この男に似合わぬ照れたような物言いに銀時はこみ上げる笑いをぐっと堪え、噛み殺した。
須臾の間を於いて、
「バっカじゃね?」
と寝惚けたような声で銀時が言った。その視線の先で、土方の顔が愴と崩れていく。
しかし逞しい腕の中から抜け出して体を捩り、寝返りを打った銀時の手が自分の首に絡みつくのを土方は感じた。
「居ねーよ」
「……え?」
「決まった相手なんて居ねーっつってんの」
「……」
上目遣いで見詰めてくる赤い瞳を呆然とした顔をして土方が見ていた。
「なんだよ、その顔は? あ、決まった相手は居ねーって、誰とでもヤるって意味じゃねえよ?」
暗に、お前を受け入れたのは相手は誰でも良かったわけではない、と忍ばせたことを土方は気づいただろうか。
「ヤローとは……、もう、何の関係もねーの」
落とした睫毛を見下ろす土方の胸が言い表せない冷たい痛みを伴ってジクリと疼いた。
銀時の口から、例え少しのことであろうとも別の男の話を語られることが堪らなく苦しい。
「なあ土方」
と、銀時が言った。
「もし人間に戻れたらさあ―――、ちゃんとした場所で仕切りなおそうぜ」
「……へ?」
「なに、その「へ」って? たく、おめーってさ、肝心のとこでなんか駄目だよなぁ。ムードもなんもねーよ。ぶち壊しだよ」
「る、るっせ! つーか、てめえ、それって……」
ニタリ、と人を食ったように笑うと銀時が言った。
「うん。おめーのチンコ、気に入ったわ」
「……」
間があった。
「俺じゃなくてチンコかよぉぉおおおっ!?」
憤怒の形相を浮かべた土方の怒鳴り声が周りの空気をどよもして響き渡った。
「犬でもこんだけでけえんだ。人間になってもでけえんだろーなぁ。ま、でかさに頼りすぎてテクは多少荒いが及第点はやるよ」
「てめえ……、上等だっ。人間に戻ったら二度とンな口たたけねえほどにヤってやろーじゃねえか!」
牙を剥き出しにして凶暴な面構えでグルルルと唸り声を漏らし不機嫌さを顕にする反面、低い声音でそう言った土方の尻尾は引き千切れんばかりの勢いで左右に振られていた。


≪完≫




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