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侵される前の、君との紅い糸。1



「毒に侵され、君に溺れて逝く。」設定
ツガサイ、ちょっと連載

出逢い1
サイケ視点






「…おい、」
「…」
「おい、俺が誰か分かるか?」

ああ、これは俺の愛しい人。
霞んだ意識と涙で俺は凄く間抜けな顔なんだろう。

(中身は嬉しくて泣いていると言うのに)

「…だれ」

ごめんね、知ってるよ。でもね、これは賭けなんだ。
君が俺を拾うか、否か。

(でも俺は自分がズルイと自覚しているから)

「……名前は?」
「……しらない」

嘘を吐いた。
君に賭けるために。
涙なんて何でそんな機能をつけたんだろう。要らない液体じゃないか。
科学者の考えることは分からない。俺を作った意味さえわからない。分かりたくも無い。
けど。
君に、津軽に逢うためだと思えば、産まれてきた意味はあるんだと思ってしまったり。

(救えない)

(俺は君が好きで好きで堪らないよ)

「…初期化されているのか、そうか。じゃあ俺の名前も知らないよな」
「しょきか」
「……ああ、言葉は少し残っているな。俺は津軽だ、つがる」
「つがる」

そうだ、と綺麗にそして悲しそうに笑う津軽に心が痛んだ。
ごめんね、ごめんね。
こうでもしないと、君は俺を見つけてくれないから。

「つがる」
「お前の名前はサイケだ」
「さいけ」
「そう、それがお前に名前」
「なまえ」

ねえ、津軽。
俺が初期化されてるからそんなに嬉しそうに悲しそうに話すの?
俺のマスターの存在が邪魔で仕方なかった。俺がここに居るのを捨てられたと思っているんだろう。

(違うんだ)

俺は、許されないことをしてるんだよ。
いや、したんだ。

だから。

本当は。

(綺麗な君が俺で汚してしまうんじゃないかと不安で、)

「サイケ、お前が嫌じゃなければ俺のところに来い」

その言葉に、俺は賭けに勝ったと笑ってしまいそうになる。
ああ、助けて。こんな姑息な手で君を罠に嵌めてしまった俺を殺して。

(心の中で逆さまにぐるぐると回る感情が、)

「うん、つがるといっしょにいたい」

これくらいの気持ちを伝えるくらいは許されるはずだ。


(なんて、ね)



終わり
100811
ちょっと出会い編なるものを書こうかと。
ツガサイはなんでもいけるです。




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あきゅろす。
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