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毒に侵され、君に溺れて逝く。

★津軽×サイケ
ちょっと甘暗








「ねえ、これはなんていうの?」
「それは煙草だ、つーか触るな」
「つがる、そればっかだね」

と、何が可笑しいのか鈴が鳴るような声音で俺の膝へと跨ってくる。それが可愛いなんて思う俺も大概末期だ。
そんなサイケの行動を見ながら俺は先ほど指摘された煙草を着物の袖へとしまう。
潰されてしまっては適わない。今日は煙管を忘れて代用品として使っているのだから。

サイケの言葉はまだ幼い。ちゃんと教育すれば話し方もマシにはなる。しかしソレが面倒で俺が分かる範囲で物書きやらを教えている。

「つがる、おれがことばをわかるのはまえのますたーがおしえていたからなんでしょう?」
「ああ、そうだな」
「ふふ、それだといまのますたーはつがるになるね?」
「そうだ、けど、マスターなんて呼ぶな津軽でいい」

そう言えば笑うサイケ。ああ、コイツには何かあるんじゃないだろうか。こんなに溺れるとは。
前のマスターはサイケを捨てた。意味はない、単に飽きたのだろう。それは好都合とばかりに俺が拾ってやった。
サイケは捨てられる際に記憶をリセットされていたらしく、何も覚えていない…「初期化(フォーマット)」されていた。
それでいい。何も覚えていなくても、俺だけを記憶に残せばいい。
俺にはマスターは居ない。俺は力が他の奴らよりも強く最初は制御出来なかったから廃棄(スクラップ)されている。
お優しい科学者のお陰で記憶は残ったまま、生きていくのに必要な情報だけを入れられて捨てられた。
最後の偽善だが、まあいい。ソレのお陰で生きているのも確かだ。
今の生活のお陰で力の制御は出来るようになったし、特に不満も無い。むしろ施設よりこちらのがいい。

「サイケ」
「なあに」
「明日ここを引き払う、もう少しマシなところへ行くぞ」

ここの治安が悪くなってきた。俺は構わないが、コイツを一人にするとなると話は別。コイツが一人で出歩いていても大丈夫な場所に行かないと。
居心地は良かったが、少し飽きてきたとこだ。丁度いい。
サイケは俺の言葉に喜ぶ。

「ほかのばしょにいくの?いろんなものをみれるの?」
「ああ、お前ももう少し言葉を覚えないとだな」

ああ、可愛い。もういい、この際だ。開き直るか。コイツは可愛い。そこらへんの女より、ずっと。
抱きついてきたサイケの腰を根出ると、少しばかりビクつき赤い顔で睨まれた。

「つがる、いまのは、なんかえろいよ」
「当たり前だ、意識したからな」
「いしき」
「そう思ってやる、やったということ」
「…わかった、いまのことばわすれないよ」

何も知らないサイケ。それに教え込む俺の感情なんて、親の愛なんかじゃない。コイツに関して、愛なんてものじゃ計れない。
堕ちる。落ちる。コイツに関しては尽きることがない感情。ああ、俺でも手前を愛してやれる。
手前は人間じゃないからな。俺も貧現じゃない。だから一緒に居られる。それはある意味、一番だ。

「つがる、おれつがるといっしょならどこでもいいよ」

そうやって、俺を深みへ落とすコイツの言葉。ああ、救いようがないと笑ってくれて構わない。事実そうだ。

「サイケ」

毒なぞ、元より効く身体ではないと言うのに。











互いに我慢出来ずに貪ったあと、寝静まった静かな部屋で一つの塊が身動きをした。
肌から落ちるシーツのように白い肌が露見する。そして、自己主張の激しい噛み痕と、赤い痕。
それを愛しそうに撫でる表情から嫌悪は見られない。

「津軽…」

ああ、君という存在は俺にとって幸せに値する。
捨てられてからすぐさまやってきた津軽。それは俺が仕組んだから。
津軽は気付いていない。俺を愛するあまり俺が記憶が無いのだと知って喜んでいることを知っている。

本当は、全て覚えているのだけれど。

前のマスターが俺を捨てたのではない、俺がマスターを殺したのだ。インプットされているマスターの主導権なんてものは存在しない。
どちらかといえば、俺がマスターだった。何も出来ないマスターの変わりに俺がマスターを支配した。
そうして、廃人にして、俺は津軽の前へとわざと捨てられたように見せかけた。

そうすれば、絶対拾うことを期待して。
全て上手くいった。これで後は言葉を覚える振りをして距離を縮めればいい。
少なからず津軽は俺の身体を好んでいる。だから肉体的にも交わることに抵抗は無い。それはどれだけ俺が渇望したか。
お願いだから離さないで。君が望むなら俺は何も知らないままでいい。傍に置いてずっと。

君が俺を捨てたら、俺はどんな手段を使ってでも君の記憶を初期化して俺を位置から教え込むからね。
それも楽しそうだ。と薄く笑う。
君は、俺が君に焦がれていたことをしらないだろう。だって、俺と君は一度だけ会っているんだよ。

「津軽」

人間じゃ無くて良かった。人の寿命は短い。永遠なんて無理だ。その分おれたちの存在は得だ。

ああ、大好き。愛してる。君さえ居れば他は何にもいらない。世界には君と俺が居ればいい。
眠る津軽の頬に口付けて囁く。

「     」




100702
津軽×サイケ
この電波のように重くてもいいし、明るくてもいい。
しかし人形みたいな二人の見え隠れする嘘が好き。




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あきゅろす。
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