何度射止めれば気が済むのですか。
★乙女な臨也。甘い、かも。
「…ったくよ、お前本当に女々しいな」
「…悪かったね、どうせ女々しいよ」
なんでこの日に喧嘩なんかしてるんだろ。なんて脳内の片隅でぼんやりと考えていた。
ただ一緒に居たかっただけなのに。こんなことになるんなら、もう諦めようかな。
「じゃあ、いいよ。ドタチン辺りに頼むから」
「……手前」
「なに」
俺が他の男の名前を出すのが非常に嫌うシズちゃん。そんなことで嫉妬してくれるのは嬉しいんだけど、今はわずらわしくて仕方ない。
いくら高校からの馴染みでもそこは譲れない、とか言ってたような。
「手前は、俺の傍に居ればいいんだよ」
「…知ってる」
「だったら、門田の名前を出すな」
「……うん」
ずるい。
ほんと卑怯だよね。
嫉妬丸出しにして俺に殺し文句なんだから。怒ってるのに揺らぎそうだよ。
だって、さ。
「折角の誕生日だったのに、シズちゃん構ってくれないんだもん…」
「…まだそれ引き摺ってたんか」
「俺結構ねちっこいから」
「知ってる」
一ヶ月前だった俺の誕生日にシズちゃんはこともあろうかあのヴァローナとか言う女と仕事をしていたのだ。
楽しみにしていた矢先のショックで二週間は寝込んだ。そして仕事で池袋に行ったのが昨日。
一ヶ月は池袋に行ってなかった。というか、いけなかった。多分泣くと思って。
ほんとは抱きしめてほしかったけど、拗ねてしまった手前気まずいのもあり俺は無視をしていた。
でもそれが効かないのがシズちゃん。
いきなり俺の首元を掴んだかと思うとそのまま新宿の俺の家まで持ち帰られた。
そして、洗いざらいぶちまけた。というか無理矢理なんだけど。そしたら冒頭の台詞だ。
なにこれ、なんで俺の公開羞恥プレイみたいになってんの?
「だって…」
「…悪かった、今日は何でも言うこと聞いてやるから機嫌直せ」
「…なんでも?」
シズちゃんが頭を掻きながら言うもんだから俺は俯かせていた顔を上げる。
罰の悪そうな顔をしているから、悪いと感じているのだろう。それならば。
「…我侭でもいい?」
「ああ」
こういうときのシズちゃんは男前だと思う。かっこいいよね、俺のだけど。
「…ぎゅーって、して」
「…っ、ああ」
座り心地のいいソファに座っているシズちゃんに近寄る。
近寄ってきた俺の腰を引き寄せ自分の膝の上に乗せる。
猫のようにゴロゴロと咽を鳴らしそうの機嫌のいい俺を隙間なく抱きしめるとシズちゃん。たまらなくなって更にぎゅうっと頭を抱きしめる。
ああ、次は何をしてもらおう。そんなことを考えているとシズちゃんの手が腰元を撫でる。
それに気付いた俺はシズちゃんの手を叩く。
「…おい」
「まだ、駄目。冷蔵庫にプリン入ってたよね?それ食べたいな」
持って来て、と甘えれば溜息を吐かれる。あ、でもそしたら俺から離れるじゃん。
どうしたもんか、と思案していれば不意に体が浮く。驚いて下を見るとシズちゃんが俺を腕に乗せて立ち上がった。
わー…力持ち。なんて思いながら離れたくないと思っていたので普通に嬉しい。
ふふ、シズちゃん大好き。
ちゅ、と米神に口付けるとこちらに顔が動いたので、口にもする。
「手前…」
「気分が変わった、ベッドに行こうよ、シズちゃん」
誘うように甘えると舌打ちをされた。これはどうしようもないときに出るものだから俺は自然と笑顔になる。
首元に噛み付かれ声を洩らすと舐められる。
(ああもう大好き!)
100618
うーん、バカップル。
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