ただ君に焦がれて、そのまま消えてしまう。
★病んだ静雄。見捨てない臨也。盲目。
意気消沈してます。キャラ崩壊中。
「俺は、アイツが嫌いだ。嫌いなはずなんだ。イロイロと迷惑を掛けられて警察にも捕まり掛けた」
そう言った君。
何故、泣きそうに言うの。
言葉とは裏腹の表情に俺は少したじろいだ。
「だから、だから。俺はアイツを見ない。見ることはしたくない。存在を消したい」
消したい、と言った君の眼には既に包帯が巻かれているのに。
刃物さえ刺さらない皮膚に、突き刺したナイフは目には効いたようで、視神経へと深く傷つけた。
そして、シズちゃんの世界は暗くなった。
笑わなくなった。こちらを睨むこともしなくなった。タバコも吸わなくなった。
仕事も行かなくなった。
俺に、
殺すと、言わなくなった。
「もう、いい。新羅、俺を殺してくれ」
君の前に居るのは、新羅じゃないんだよ。
俺は無言でシズちゃんが溜めていた鬱憤を聞いていた。
そうでもしないと、本当にシズちゃんは死んでしまう。食事も取らない。眠らない。
このままだと、危ない。と新羅が言っていた気がする。
そりゃそうだ、一週間の徹夜でも人間は死んでしまう程にヤワなのだから。
(あのね、シズちゃん)
(俺も嫌いだったんだけどね、もうどうでも良くなったんだよ)
「静雄、臨也」
「新羅」
「…」
「君たちの病気を治すよ、俺は何時もの二人に戻って欲しいから、ね」
「いい、新羅。俺は殺せ」
新羅が溜息をつくのが見えた。
俺としてもシズちゃんを殺したくはない。
けど、シズちゃんは死にたがっている。それは彼の望みだ。
「静雄、君は駄目だ。…腐れ縁の俺にそんなことを頼むなんて酷な奴だね…」
「…。ノミ蟲はどうした、ここに居るんだろ」
「居るよ、君の目の前にね」
「何で居る」
そう言ったシズちゃんは俺の気配を悟ってか、こちらへ向いた。
包帯が痛々しい。それでも彼の眼は俺を移すことが無い。
「今、俺と臨也の病気をって言ったか?」
「そうだよ」
「臨也は怪我をして無いはずだ、どういうことだ」
「臨也は、声をなくしたのさ」
と新羅が苦笑しながら言った。
そうだよ、シズちゃん。
君が嫌いだと言って馬鹿にした減らず口と言われるものは、無くしたのさ。
目が見えない君、声を亡くした俺。救いようがないね。
「声が?」
「そう、精神的ショック、で」
「一時的なものなのか」
「多分」
そう。
俺は君のせいで声を失った。
強気な君が、血まみれで居たら、誰だってびっくりするでしょ。
そして、傷付けられたのではなく自分で、しかも死にたがっているなんて聞いたら。
俺の心は凍りついた。
こんなに長く付き合っていたのに、こんなシズちゃんが思い詰めているのも知らないなんて。
だから、俺は。
「声はいつか戻る。しかし、問題は君の眼だよ、片目は無事だけど、もう片方がね」
「両目潰すことは」
「駄目」
「…」
「静雄…、ん?どうしたんだい臨也」
ねえ。
シズちゃん。
償えることならば、償うチャンスをちょうだい。
君には生きていて欲しいから。
俺はゆっくりと自分の眼に指を指す。
それに新羅が驚いて、少し考えて苦笑した。
「君はどうしようもないね」
(知ってる)
聞こえることのない声でそう口を動かした。
「静雄、さっそく手術しようじゃないか」
「は?」
「臨也はセルティと一緒に居てね」
頷くのを見た新羅はシズちゃんを引っ張っていった。
少し喚いていたシズちゃんは引き摺られながら部屋に引き込まれていった。
そうして、俺は溜息をついた。
ねえ。
シズちゃん。
これで、君は俺を殺す勢いが戻ればいい、なんてずるいこと考えてる。
どうしても、君を手放すことが出来ないんだ。
だから。
(せめて、死ぬ前に俺を殺してよ)
★
手術をしてから一週間。
その間おれは新宿に戻り仕事をしていた。
一時的といえど声は出ない。なのでほとんどを波江に任せてデスクワークを中心にしていた。
これはこれでしんどい。面倒だし、相手も五月蝿い。
「今日は彼の包帯が取れる日じゃなくて?」
ぽつりと言った台詞に俺の手は止まった。
そう。
今日は、包帯を取り見えるかをチェックする日だ。
あれから俺は新羅の家に行って無い。シズちゃんが寝泊りしていたし、俺も仕事があったから。
あっちからきてくれないかな、なんて淡い期待をしながら俺は机に顔を伏せた。
「らしくないわね、まあいいけど。今日はもう上がってもいいかしら?辛気臭いわ」
顔を伏せたまま手をヒラヒラと振ると、書類を置き上着を羽織る姿が見えた。
「鍵は閉めていくわよ」
もうどうでもいい。これで強盗とか入って殺されるならそれでもいいし。
……いや、駄目だ。シズちゃんに殺されたい。
(可笑しくなってる脳内の思考に犯されて侵されて冒されて)
頭を抱えた。何かから隠れるようにも取れる行動をしながら、俺は目を閉じた。
(どうか、)
夢だと、笑って。
★
がちゃん、とした音に気付いて俺は目を開けた。
いつの間にか寝ていたようだった。昼間の明るさなど無く、夕方の夕日が部屋を照らしている。
………あれ。
俺、寝てた?
しかも、波江でも居るのかな。何か落とすなんて珍しい。
しかし声は出ない。波江の姿も見えない。キッチンか?
のそり、と無理な体勢で寝ていた為軋む身体を動かす。
立ち上がった瞬間に開かれた扉を寝起きのままぼんやりと見た。
しかし、ソレも一瞬のことだった。
人口の金色を見てしまった俺は目が覚めた。
……ああ、その強い眼差しがもう一度見れるならば。
俺は喜んで目を差し出すよ。
やんわりと笑った俺に君は何を思ったのだろうか。
100510
無駄に長く多分続きます。
ちょっと微妙な終わり方です、ね←
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