現実から逃げたい一心で、決めました。
★だいぶ別人。ひたすらに暗い。
でも死ネタではない。病んでます二人とも。
ネタ的にも酷い。
覚えているのは、複数の野太い笑い声と複数の手。
触られて、縛られて、薬を飲まされて、泣いて、鳴かされて。
思い出したのは、金色の君で。
痛みも感覚すらも、何も感じなくなった。
ただ、虚無感の中で終わる事を願って、また会える事だけを糧にして、後は流されるがままに身を委ねた。
暫くして、誰かに身体を抱き抱えられた。
酷く優しい、そんな触り方で。
傷付いた身体は動かす事も出来ずに、ただ運ばれる揺らめきを感じていた。
ボロボロの身体は、自分で触るのも嫌なくらいに汚されていた。
もう、これは俺の身体ではない。
そう思うと、涙が出てきた。
ああ、俺はまだ生きている。
どうせなら、殺して欲しかった。
こんな屈辱を男から受けて、平気な奴が居たら俺が殺してやる。
それくらいに、とても憎かった。
開かない視界。
身体が現実へ戻るのを拒否していた。
そりゃそうだ、こんな屈辱は今まで受けた事が無いのだから。
痛む節々、殴られ腫れた口端、青黒い打撲傷。
これが、俺の記憶に残るのか。
嫌だ。
消して。
消させて。
誰か、
誰か。
お願い、だから。
俺を殺して。
「臨也」
聞きたくて堪らなかった声が落ちてきた。
優しくソッと俺の頬に触れてきた指先。
嗚呼、シズちゃんだ。
どうして、俺に触れるの。
もう汚いんだから、触らないでよ。
お願い、だから。
「臨也……っ」
嗚呼、開かない視界。
もう見る事を拒否してしまった。
世界が、金色が、俺の目に映る事は、もうない。
君を見る事が、出来ない。
「安心しろ、俺があいつらを殺してやった。手前はもう何も怖がる事はない」
シズちゃん。
シズちゃん。
シズちゃん。
「ね、え」
「何だ」
「俺、もう、」
死にたい、よ。
そう言えばシズちゃんの手が首へと触れる。
なあ、と話し掛けられた。
「手前の為にしてやりたいけど、手前が居なくなったら俺はどうしたらいい」
「…………」
「手前が居ないと、だれも俺を見てくれないだろ」
「………シズ、ちゃん」
「なあ、どうしたらいい」
ねえ。
シズちゃん。
また、泣いてるんでしょう。
見えないけど、泣いてる気がする。
一人にはしたくないけど、俺は生きて居たくない。
忘れたい。
逃げたい。
折原臨也が、逃げたいと思ってしまうほど。
この体験は、辛過ぎた。
「なあ」
「ねえ、俺は逃げたいよ。もうシズちゃんが罪を重ね無いように」
「そんなこと、」
「だからさ、一緒に死んでよ。そしたら、ずっと一緒だよ、一人じゃないし逃げることも出来る。新羅に睡眠薬とか貰ってさ、強い奴とか。全部溶かして二人で飲み干そう」
もう、リアルには戻りたくない。
そう言うと、シズちゃんが俺を抱きしめた。
「手前が俺を置いて行かないなら、どうでもいい。新羅に頼めばいいんだな?」
「そう、新羅に睡眠薬貰って。強い奴ね、一月分貰えばいい」
俺達は何処からか可笑しくなっていたんだ。
二人で生きる事を望まなくなった時点で、可笑しい、と。
死にたい。
死にたい。
生きて、居たくない。
「シズちゃん、死んだあとに部屋が燃える様にするから」
「わかった」
「証拠は全部燃やしてしまおうね」
「ん」
「新羅には悪い事したかな」
「さあな、」
「まあいいか、ほら早く逝こうよ」
俺達は何処から可笑しくなったのだろう。
最初から、なのかな。
もう、何も考えたくない。
「シズちゃん」
「臨也」
「一人は寂しいよね、でも俺が居るから大丈夫だよね」
「ああ、一人は嫌だ。手前が居るから大丈夫だな」
「ふふ、早く新羅来ないかな」
「そうだな」
暫くして、ニュースに新宿のとある高級マンションが放火された、と報道された。
死体は、無いと。
終わる
100323
生きてても死んでても変わらない二人かもしれない。
続く場合は生きてます。どうするか。
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