恋と呼ぶには、深すぎる感情。1(静臨)
★臨也、片思い?
お願いだから、俺からシズちゃんを取り上げないで。
二十歳をとうに過ぎたけど、子供のように我が儘に泣き喚いてしまいそうだった。
シズちゃんに、好きな人が出来たらしい。
あれだけ有名なんだ、噂だって直ぐに耳に入る。
でも、どうしてだろう。
シズちゃんが人と壁を作っていたことに俺は安心していたんだ。
誰も、俺からシズちゃんを奪わないだろうと。
俺から、彼を。
なのに。
俺が気付かない内に、シズちゃんの心が誰かに盗られていたらしい。
シズちゃんの全部は俺のものなのに。
嫌だ。
そんなの、赦されない。
「………シズちゃん」
「あ?……んだよ、池袋にくんなって何回言えば気が済むんだよ、臨也くーん?」
ああ、何時も交わす言葉さえも俺のものなのに。
「……シズちゃん、好きな子出来たらしい、ね」
嗚呼、聞きたくないけれど。
「………、フン」
肯定も否定もしない。
顔を、逸らした。
ねえ、誰なの、その子。
知りたい、知りたくない。
ああでも、知ったら、殺してしまうかもしれない。
だって、俺以外の名前なんて、聞きたくないし。
あ、でも。
俺たち付き合ってる訳じゃなかった。
「シズちゃん」
「あ?」
「俺もう池袋来ない。だから、バイバイ。」
よし。
仕事に専念しよう。
そして、このシズちゃんに対しての感情を忘れてしまおう。
会いに来てただけだし、俺が居ない方がいいよね。
喧嘩と会いに来てるけど、ぶっちゃけ怪我するの俺だけだし、アンフェアだよね。
そう、感情を殺してしまおう。
(涙が止まらないのは、シズちゃんが好きな人に対して)
(壁を作らずに俺と新羅しかいなかった「特別」に入れたのが)
(気に食わなくて、いや、ただのヒガミだ)
(喧嘩人形に恋が出来るなんて)
(知りたくなかった)
何かが、零れた気がした。
100228
続きます
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