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ああ、これを恋と呼ばずして何と言うのか。1(静臨)



★遊郭パロ
ちなみにシズちゃんが遊郭側
状況が逆なだけでシズイザです




「………また、来たのかよ」
「やだなあ、シズちゃん。俺が暇人みたいなこと言わないでよ」

だったら、一日と開けずに来てる手前は、なんだ。
大体、抱かれにきたわけじゃない。
ただの世間話でここにわざわざ高ェ金払って来てるコイツは馬鹿だ。
自分で言うのもなんだが、俺はこの遊郭では一番の稼ぎ手だ。
大夫、だったか。
だから、普通の奴らより高い。
なのに。



「毎日、毎日。飽きねェな」
「………ま、しょうがないよ。やっぱり外は汚いからね。人間が好きな俺だって、疲れたりするよ」
「………」

外。
ああ、いつ以来だろうか。
長らく出ていない。
そんな必要がないから。


「なあ、外はここよりも汚いか?」
「………、少なくとも嫌なことがないここの方が綺麗だね」
「……そうか」


酷く、もどかしい。
俺は毎日、知らない奴を抱くだけの存在。
髪も伸びた。染めすぎて白くなりつつある。
ああ、切りたい。


「シズちゃん?」

確か、ハサミがあった筈だ。
ここは離れだから、一通り揃っているし。
箱をガチャガチャと漁っていると、出てきたソレ。



「なに、を」

長い襟足を引っ張って、ハサミに挟んだ。

つもりだった。




「シズちゃん…!」

がしっとハサミを持つ手を掴まれた。
焦ったような顔をして、奴が止めて来たのだ。


そこで、やっと奴を見た。
泣きそうな、顔をしていた。


「なんで、切っちゃうの…!」
「………何となく」

人間はそういうものだろ。なんて言えば、抱き着かれた。
ハサミは取り上げられて、投げられた。
頭を掻き抱くように、奴の胸に俺の頭がある。


「違う、よ」

ああ、どうしようもない。
苦しいくらいに狂っている。


「シズちゃん、」
「ん」
「俺が身請けするから、ここから出よう」
「………やだ」
「…!」
「ああ、でもソレのが安全か」

追われるよりは、身請けのが。
仕方ないな。
立場が逆転していて笑えた。


「いいぜ、じゃあ早く俺を連れ出せよ」
「………うん」
「仕様がねえから、手前の犬になってやる」
「うん」
「言っとくが、だいぶ重いから」
「負けないし」

内緒話をするようにコソコソと話す俺達。

「俺がシズちゃんの飼い主になるから、俺だけしか見ちゃ駄目だよ」
「ああ、お前も俺だけ、な。」



ここに通い出してから、何年経っただろうか。
ずっと、俺の名前を呼んでくれないシズちゃんの気を引こうとしたのが始まり。
いつしか、恋になるとは知らずに。




「シズちゃん、俺の名前覚えてる?」
「ああ」
「呼んでよ、」


飼い主の名前くらい、ね。




「臨也」



ああ、
(幸せ過ぎて、死んでしまうかも!)







100223
続くかな





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あきゅろす。
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