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Act.4




「ねぇーねぇー!さっきの何で?」

『えっと…』

「何でカイト先輩と?!」

『え…と』

「「「「何で何で!!」」」」

『…………(汗)』






ューベーズ
Act.4:あの人秘密






そして王子様にクラスに案内してもらった私は、送ってくれた王子様に一礼しお礼を言った。
王子様が居なくなるまでその場に居、居なくなったのを確認した私は自分の席につき安堵の溜め息を一つし、早速の友達第一号を作るべく立ち上がろうとした瞬間…






「ねぇーねぇー!」






と言うわけで冒頭に戻ります。






「そう言えば入学式居なかったよね?!」

「もしかしてカイト先輩とずっと一緒にいたの?」

『えっと…だから』

「「「「ずっるーい!」」」」

『…………』






は、話を聞いてもらえない…
と言うか王子様…じゃなくてカイト先輩?はもしかし…なくても有名なのかな?
この様子を見る限り…






『えっと…実は私、迷子になっちゃってそこで偶然会って送ってもらっただけなんだよね…』

「「「「…………なーんだ!!」」」」






私が理由を話すと“そうなんだー”と皆口を揃えて言い、私の前から去っていった。
それゆえ、先程まで賑やかだった私の机の周りは誰も居なくなり、虚しいほど静かになった。






『…………』






はぁー…
こんな調子で友達出来るのかな…。


周りを見れば、もう既にグループは出来ており私が見る限り私以外に1人の子は1人も居なかった。






『そもそも、カイト先輩ってどんな人なんだろう…』

「教えてあげようか?」






…………






『うわぁ!?』

「あはは、良いリアクションね」






気がつけば私の横には胸まである綺麗な黒髪の美人な女の子が座っていた。
そして胸には私達には付いていない“G”と書かれたハート型のバッチが付けられていた。






『い、いつから…あなたは…』

「私の名前は紺野千雨
いつからって言われたら…最初からかな?」

『嘘?!』






ぜ、全然気がつかなかった。


こんなに綺麗な子、気付かない訳ないのに…






「で知りたくない?」

『な、何が…?』

「カイト君のこと」






――ドクン―






心臓が跳ねた。
カイト先輩の事を教えてもらえる嬉しさと、彼女がカイト先輩のことを君付けで呼ぶ疑問が交差する。






『し、知りたいです』






そして彼女は妖しい笑みを浮かべ私に言った。






「良いわよ、教えてあげる」

『…………』






思わず息を呑み込んでしまった。
彼女の笑みが、あまりにも美しく恐かったから…






「まぁ、一言で言えばカイト君は機械なのよ」

『…………はい?』






えーっと…
すみません、最近私耳悪いみたいですね。
カイト先輩が、機械…?






「雛はこの学校が何専門か知ってるわよね?」

『え、うん。音楽…だよね?』

「そうよ。あと何科があるのも知ってるわよね?」

『えっと…楽器科、作曲科、声優科、芸術科…?』






因みに私は作曲科。
はっきり言ってこんな変な科がある学校ってこの学校だけだと思う…

楽器科って…
普通ピアノ科とか分かれるはずなのにね






「その通り!
で、そこで何か違和感感じない?」

『何が?』

「この学校、音楽専門のくせに声楽科が無いのよ」

『!!』






確かに…
音楽学校には必ずあるはずの声楽科が此処には無い。
一応声優科はあるけど、歌と声とは全く別物
習う内容も全然違うはず…






「だけどね?その代わりこの学校は他の音楽学校には無いような学科が一つあるのよ
その名も“機械科”」

『機械科…?』






なんで…?
何回も言うけど、此処音楽専門学校だよね?






「だけど只の機械じゃないのよ?
私達作曲者の曲を歌ってくれるVOCALOIDと言う機械なの
しかも見た目は私達と瓜二つで、彼らにはきちんと感情もあるし私達と同じ様な事も出来るのよ」

『私達の曲を!?
え、それって凄いことじゃない?!!』

「そう凄いことなのよ…
だけど、ちょっと問題があってね…」

『問題?』

「まぁ、そんな凄い機械を作るにはそれなりの技術とお金が必要になるのよ
故に機械科…またの名をVCL組の生徒は6人しか居ないのよ」

『6人!?』






少ない…だけど、そりゃあそうだよね…
そんな凄い機械が沢山居たら今の日本はどうなるんだって感じだし…
周りが全員機械人間になっちゃうよね






「そして、ね…
その6人に私達作曲科全員の曲を歌わせるのは無理なの
そんなことさせたら機械がエラーを起こして壊れちゃうから

そしたら6人の取り合いになるの…分かる?」

『うん…』






だって実際私も歌ってもらいたいもん。
心を込めて作った自分の曲…
その曲を歌ってもらえるほど嬉しいことは無いから。






「そこで学校側が決まりを決めたの」

『決ま、り?』

「そう、取り合いが起こらないようにね…

一つ、作曲者はVOCALOID自身が決める。
二つ、VOCALOIDに作曲者に選ばれた人は生徒会に所属する。
三つ、VOCALOIDは敬意の意味を込めて選んだ作曲者のことをマスターと呼ぶ。」

『…………』

「大体はこんな感じかしらね?
他にもマスターの許可があれば呼び方を変えても良いし、VOCALOIDとマスターの同意があればマスターを替えることも出きるの」

『…………』






マスター…?




「仕方ねぇな…保健室にでも連れて行かせろ」

「はい、マスター!」







『…………もしかして』






「俺の名前は本条響だ」






『……ねぇ、紺野さん?』

「千雨で良いわよ
で、どうしたの?」

『か、カイト先輩のマスターって…本条、響ですか?』






私がそう質問すると、千雨は目を丸くし驚いていた。
その目は“何故知っているの?”と言う言葉を分かりやすいほど表していた。






「……知ってたの?」

『知ってたと言うか…』






「おいブス」






『最悪の出会い方でした』

「はい?」






あー!もう!!
今思い出しただけでも腹が立つ!!
初対面でいきなりブスって…


くそー!確かにあんたよりはブスですよ!!






「でも…まぁ、響先輩の事を知ってるなら話が早いわね
雛の言う通り響先輩はカイト君のマスターでこの学校の生徒会長よ」

『…………え?』

「因みにこれだけは絶対覚えててね!
響先輩に目を付けられたらこの学園では終わりだから!!
響先輩は学年主席で先生方からの信頼も厚いし、VCL組の生徒並みにモテるからこの学園女子生徒みんなを敵にするって意味だから」

『…………嘘』






「雛、俺に逆らったことを後悔させてやるからな?」






って私ヤバいじゃん!!
名前も完璧に覚えられてるし、あんな事まで言われたし…


さようなら、私のハッピースクールライフ。
こんにちは、私のバッドスクールライフ。






「――…と言うわけで、この学園の事大体分かったかしら?」

『……うん』






だけど…
やっぱりまだ納得出来ないなぁ…
あんなに優しいカイト先輩が機械だなんて…


はぁー…
いきなりの失恋か。
結構本気だった分、この事実は苦しいほど痛いよ…






『…………』

「その顔はまだ納得出来てないって顔ね…」

『え?!い、嫌!そう言う訳では……ありますけど(ぼそっ)』

「…っ!あはははは!!!!
雛って本当に素直ね!
それじゃあ、そんな素直で可愛い雛に取って置きの所に連れて行ってあげる」

『取って置きの、所…?』

「そうよ」






ニヤリと笑う千雨。
高鳴る私の心臓。


何故こんなにも私の心臓が高鳴っているのか、この時の私には分からなかったけど…
今思えば、多分期待していたんだと思う。

千雨の発する、その言葉に…――






「VCL組に」






Act.4:あの人秘密END



あきゅろす。
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