【オリジナル小説】螺旋状ノ恋【中世ヨーロッパ風ファンタジー】
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「カイト殿下、フィル秘書官様。本日はお越し戴き誠に感謝しておりますわ。」
アタシは満面の笑みを浮かべて言う。 勿論その笑みは普段浮かべている偽りの物などでは無く、心からの物だった。
「いや、丁度“紅”の工業の技術を学ぼうと視察を考えていたところでしたから。 僕達にとっても都合がいい。」
カイト殿下も、同じように笑みを浮かべていた。
「長旅でお疲れでしょうし、一度奥の部屋でお休み戴かれたらいかがでしょうか?」
そう言った後、アタシは笑みを崩さずにカイト殿下にしか聞こえない様な声で付け加えた。
「シオンが『兄さんはまだ来ないのか』ってさっきから機嫌悪くって。」
と、小声で囁くと、彼は苦笑いを零してからアタシの後について歩き出す。
「カイト殿下。」
歩き出す彼の足を止めたのは、フィル秘書官だった。
「私、ファイ姉様と待ち合わせをしていますので。 これにて失礼させて戴きます。」
彼が『分かった』と呟くと、彼女は一礼して人の波に埋もれていった。
「そうですわ、お荷物をお持ちしましょうか?」
「いや、大丈夫だよ。これくらい何てこと無い。それに年下の、しかも女性に荷物を持たせるなんて真似はしたくないな。」
アタシが立ち止まったついでにカイト殿下の顔を覗き込んで呟くと、彼はニコリと微笑んでから再び歩き出した。
奥に有る応接室のドアを開けると、そこには待ち草臥れた様にシオンが座っていた。他に人はいない。
「カイト殿下、本当に久しぶりですわ。 最後に会ったのはいつだったかしら?」
「確か2年前の貴女の即位式のとき以来でしょうか。 お二人共元気そうで何よりです。」
アタシ達が微笑みを浮かべながら話していると、
「お前等...ここには俺達以外誰もいないんだし、いい加減その堅苦しい喋り方止めたらどうか?」
横から口を挟んできたのはシオン殿下。
「そうよね。 折角誰もいないんだし。 ね、カイト。」
昔、まだアタシと、それから同い年のシオンが幼かった頃。
両親達は毎日公務に追われていて、正直アタシ達は暇だった。
そんな時、“青”からアタシ達の話し相手に、少し年上のカイトが連れてこられて。
カイトはアタシ達を本当の弟妹のように可愛がってくれて、毎日一緒に遊んでくれた。
今では皆国を背負う身となった故、昔のように気軽に会ったりは出来ないけれど。
それでも、今みたいにこうして3人で会える時が全く無いわけではない。
「そうだな。」
苦笑いしながらカイトが呟く。
「ま、その様子じゃ兄さんもいつも通りみたいだな。
それより、今日は何の目的でここへ来たんだ? 表向きでは“紅”の街の視察と聞いたが、兄さんの事だからそれだけじゃないだろ?」
シオンがカイトの顔を覗き込んで言う。
「相変わらずシオンは鋭いな...まぁ表向きのその理由も勿論有るよ。只、それは後から父に頼まれた事。 本当の理由は、二人に話さなければならない事があるから来たんだ。」
カイトはいつもより低く小さい声で話し始める。回りをかなり警戒しているようでもあった。
「良いか、俺以外に知ってるのは父とタクト兄さんだけ。
少し前に父の退冠式の日が決まった事は知っているだろう? が、王がいないまま国を進めていくわけにもいかない。
そこで父が後継者として選んだのはまぁ当然だがタクト兄さんだ。
即位式の日ももう決まっている。 退冠式の1週間後、五月十六日の兄さんの誕生日にあわせて行われる事になった。」
カイトは一度言葉を切って深く溜息を吐く。 アタシは只黙って身動き一つせずに話を聞いてることしか出来なかった。
「で、そんな国家機密レベルの話が俺達に何の関係が有るんだ?」
確かにシオンの言う通り。
今のところ、カイトの話がアタシ達に関係が有るとは思えない。
が、彼の事だ、何か考えが有って話してる筈に違いない。
「シオンの言う通り、今のところまでなら君達にとっては何一つ関係ない話だ。
実際今の話なんか只の前置きにしかならない。
で、兄さんが王になった後の事だが...俺は暫くこの『紅』で生活しようかと考えている。」
カイトは再び溜息を吐くと、傍らに置いてある3つのスパークリングの白ワインが入ったグラスの内の1つを手に取り口を付けた。
「それで下見に来たってことか。 兄さんらしいよ。」
カイトの言葉にシオンは頷く。 カイトはもう一口ワインを口に含んでから、
「ローザ、暫く世話になると思う。 宜しくな。」
と、アタシの方を向いて何処か心配そうな表情を浮かべながら言う。
「任せて頂戴な。 お客人の1人や2人、何とでも出来るわよ。」
そんな彼に、アタシは精一杯の微笑みを浮かべていった。
* * * * *
という訳で始まりましたww
PIAPROに名前と口調を変えただけのボカロ版もうpしてます★+°
ただの自己満足な駄文ですが読んでくださる皆様に感謝です!!
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