SS ミクリン《この感情を殺して》 ※ミク→リン 暗い。 学校帰り、いつも寄るファーストフード店。 「私はコーラとポテト。リンちゃんは?」 「リンはシェイクー」 学生達で溢れかえる店内で空いている席を見付けて座る。 いつもと同じ。 学年が違うから毎日の話のネタが尽きない。 ミクが喋って、リンが頷く。 リンが喋って、ミクが頷く。 二人で笑う。 私の大好きな時間。 いつもと同じ。 …同じはずだった。 「あのね、彼氏できた」 目の前の彼女が恥ずかしそうに言う。私は表情が崩れないように目を見開いた。 「一番最初にミクちゃんに伝えたくて」 「本当に!?え、誰だれ?」 好奇心旺盛のフリをして身を乗り出す。 本当は聞きたくなんてないのに。 耳打ちされた名前に目を細めた。 やっぱりね、薄々は分かっていたんだよ。 リンちゃんの彼を追う目が最近変わったのも、私と居る時でも頻繁にメールしていたのも。 知ってたんだよ。 知ってて気付かないフリをしていただけ。 私の愛しいリンちゃんが嬉しそうに笑う。彼と繋がりが出来た事に喜びを感じて。 「良かったね、おめでと!」「ありがとミクちゃん」 胸の奥がギチッと締め付けられて痛い。 さっきから想いと裏腹の言葉を紡ぎ出す声帯が震えだした。 鞄の中で死んだように静かなケータイに目を落とす。 私はおもむろにそれを引っ付かんで立ち上がった。 「ごめんリンちゃん、ちょっと電話が」 片手で謝りながら、苦笑する。 「あ、いいよ。いってらっしゃーい」 リンちゃんに見送られながら私はトイレへ駆け込む。 扉を閉めた瞬間、胸の内につっかえていた悲しみが押し寄せてきて頬が濡れた。 分かっていた。 私とリンちゃんは友達で、親友で。これ以上はないってこと。 頭では理解できていたのに。 やり場のない悲しみと恨めしさと愛情とがグルグル回って、目眩を起こしそうだ。 「ああ、男に産まれたかった」 現実味のない願いを口にして、無理矢理笑う。 席に戻るんだから、こんな女々しい涙はしまわなくっちゃ。 今私が泣いた所で彼女を混乱させるだけなんだから。 ああ、やっぱり私は友達で充分だわ。 だって友達なら、彼氏がいても、例えこの先旦那が出来ても、ずっと仲良く傍に居られるじゃない。 鏡に向かって一回だけ笑顔の練習をした。 「おかえりー…」 「ただいま、あーポテト冷めちゃった」 「ミクちゃん?」 「ん?」 「…どうしたの?」 「え」 …本当に聡い子なんだから。 そんな心配そうな顔してこっち見ないで。 やめてやめてやめて。 優しい仲良しのミクちゃんで居させて。 「み、ミクちゃん!?」 私はリンちゃんの視線から逃げて、コーラの蓋を取ると一気に飲み干した。 「ゲホッ、ゲホゲホ」 「大丈夫!?」 どうやら器官にも入ったらしく、凄く苦しくなる。 「…苦しい…」 「え!い、今水貰ってくる!」 リンちゃんがパタパタと私から遠ざかっていく。 ―嗚呼、凄く苦しいです― ********* 初のミクリンww 百合でっせ☆ [*前へ][次へ#] |