02.business
……本当は捕まる気なんてなかった。
しかし、
戦争が終わる間際。
神羅の一般兵達が話している会話を小耳に挟んだのが今後の行き先を変えたのだ。
そう、
それは"賭け"だった。
「陰陽族の末裔とはお前か、と?」
社の入口に赤髪の青年が佇んでいた。
背後には神羅の一般兵が数人。
真っ暗な空間、微動だにせず正座をし狐のお面をつけた少年に問い掛ける。
この国にスーツ姿の者などいない。
すぐに神羅の者だとわかった。
「悪いが一緒に来てもらうぞ、と」
『……私をどうするというのだ?』
「…さぁな、と。上の考えることは気まぐれでね」
『………』
二人の声が静かに…静かに響き渡る。
スバルの声が漏れると一瞬空間が止まったのが青年にはわかった。
空気の流れが変わったことを肌で感じる。
いくつもの戦場を切り抜けてきた彼にはすぐにわかった。
(こりゃ上が放っておかないわけか、と)
左手を水平に伸ばし一般兵へ入るなと合図をすると青年は寄り掛かっていた扉からゆっくりと離れ中へと歩を進めた。
カツ―…カツ―…
寂しい程に響く音。
少年に近付くことは容易だった。
「逃げないのか、と?」
『……』
「…神羅が嫌いなお前が…どうして攻撃をかけてこない?」
『…人を、捜している』
「人?」
リンッ―――………
狐のお面の端についた鈴が鳴り響く。
瞬時、周りに風が巻き起こる。
中の異変に気付き外で待ち構えていた一般兵が銃を構え突入しようと試みる。
しかし赤髪の青年は再び左手を宙に翳しことを制した。
「アンタの探している人物…それは神羅にいるのか?」
『…確証はない』
「けど脈はあるんだろ?」
『……』
「…取引きをしないか?
確証がないが可能性があるなら騙されたと思って来てみないか、と」
シュン…ッ……
周りを取り巻いていた風が止む。
少年の表情はお面の下でわからない。
しかし恐らく――……
(コイツ……、どんだけ重いもん背負ってんだ?)
少年の前へと立つ。
微動だにせず彼は薄い唇を動かし問うた。
『長太刀を持つ男、
……それは神羅にいるか?』
「ナガタチ?」
長い刀、それを持つ人物。
青年はそのワードにすぐにある人物が浮上した。
ソルジャー1stの奴らは確かに長い刀を使う奴らはたくさんいる。
だが、ずば抜けて長い刀を使っている人物は…
……そう、彼しかいない。
「さて、いこうか姫さん。
…敵の巣窟へ」
腕を伸ばしす、
するとそれに導かれるように少年は手をとった。
―――…交渉成立、と
ミッション――……
タークスの任務はそんな響きのいいもんじゃない。
交渉からスパイ、拷問や暗殺…。
楽しいとは言えない職務。
しかし、今回はなかなか面白い者に出会えたようだ。
「……仕事、完了だぞ、と」
悪戯っぽく引き攣られた口端。
それに誰も気づく事なく、一機のヘリがウータイの空を飛び立った。
end
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