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41.under the sky





『…っ…、…ここ…は?』

「おぉっ!アンタ気がついたかい!?」




起きた所は辺り一面真っ白な場所であった。
どうやらそこはミディールにある小さな民営の病院で、数週間前に海岸に打ち上げられていたらしい。
銀髪の巨漢に護られるように。




『寒くないかセフィ?』

「…あぁ、」

『ライフストリームの中にいたなんて嘘みたいだ』




まだ両脚の機能しないセフィロスを車椅子に座らせながら海岸に佇む。
同じ銀髪を揺らしながら静かに打ち寄せる波を見つめた。
スバルは一度ライフストリームへ自ら落ちた。あの時は必死だったし、ましてや魔晄に侵されながらの入水。
それも目的や強い意思があったからこそ戻ってくることが出来た。
もし意思が弱いのであれば、…考えたくもない。

小波を見つめ百面相しているとセフィロスに頬を抓られた。




『い、ひゃい…』

「変に考え込むな。お前は考えすぎだ…俺もお陰でこんなザマだ」

『……そうだね』




少し、ほんの少しだけだけどこの人は変われた気がする。
その代償は大きかったけれど、きっと何かを得られたと思うんだ。




「お前はどうなんだ?記憶が欠けたのだろう?」

『あ…うん、少しね』




そう、足りないの。
大概のことは思い出すことができたんだけど、何か、何か大切なことが。

ふわりとセフィロスは片翼の翼を広げスバルを包み込んだ。




「無理に考え込むな、時が解決してくれることを祈れ」

『誰に?』

「星に、か…」




俺達は生まれてきてはならなかったのかもしれない。
ましてや、双子の刀を携え体内には厄災である細胞を宿してしまっている。
それを何故星は生かすことを許したのか…

俺達に何かを成し遂げろと―――?




「なぁ、何か歌ってくれないか?」

『うん…』







何だろう…

本当に、何を忘れてしまったのだろう?
































「はッ、は…っ」




神羅の追っ手から逃げながらクラウドを守り走ることは容易ではない。
ましてや、以前より各段と体力が低下している今。どれだけ持つか…時間との戦いであった。

一度、重度の魔晄中毒に侵されたクラウドを担いでニブル山を越えてコスタ・デル・ソルから出ている定期便に乗ってジュノンへ渡ろうかと考えたが、以前よりも体力や戦闘力にリスクがある今。
登っている間に追っ手に射殺しかねない。
ザックスは矢も終えず陸路を駆使しどうにか向こうへ渡れないか考え南下することにした。




「はー…ちょっと休むか、クラウド」




日も山へと沈み反対の空からは月が顔を出す頃。
今日は森の中に見つけた大樹の懐に空いた穴で野営をすることにした。
季節的にはまだ寒くもないはずだがクラウドの事を考え途中よった村で寄った雑貨屋で買った毛布をかけてやる。




「こんな所まで逃げてきたのによ、上のお偉いさんはどんだけ暇なんだろうな?」

「う、ぁ…」

「悪ィ悪ィ起こしちまったか?大丈夫、独りじゃねぇよ。ゆっくり寝な?」




クラウドの綺麗なブロンドの髪を撫でて眠るように促す。
すると安心したのかクラウドは再び瞼を伏せ寝息を立て始めた。

村で寄った雑貨屋で知った。
あれからどうやら4年の月日が経っていたらしい。
宝条のことだ、またよからぬ実験を施していたことに違いない。
だが、其処までの変化は身体に見当たらない。
ただ体力は落ちていたが、それは4年間のビーカー生活が影響したのだろう。




「早くミッドガルへ行かなきゃな…」




そうだな、ミッドガルに着いたら何をしよう?
先ずは家探しだな。
それから新しく服も買って…あ、仕事探さなきゃな?
まさか神羅に追われてるのにソルジャーや神羅兵なんかできねぇし…




「そうだ!」

「!?」




いきなり大きな声を出したザックスにビクッと驚きクラウドが目を覚ました。




「クラウド!ミッドガルに着いたら何でも屋をやろう!」

「?」

「そう、何でも屋!クラウドと2人でなら絶対楽しいし」




約束な、と動かない指をすくい上げ子指同士を絡め約束をした。
大丈夫、絶対大丈夫だよ。
俺達ならなんでもできる。
だから早く帰ろう?
俺達が夢に向かって生きていた場所へ。




「…あれ?」





――大丈夫、絶対大丈夫……

独りなんかじゃない…




一体誰が言った言葉だっけ?
頭の中に誰かの笑顔が掠めるがはっきりと思い出せない。
見たことのない光った虫達が身体の横を通り過ぎまるで月に吸い込まれるように天へ舞い上がる様をザックスは見つめていた。
気がついたんだ。
自分の中にあった大切な何かが流れ落ちてしまっていたことに。




「なぁ、…大丈夫って、言ってくれよ」




笑顔の見えないキミに。
聞こえるはずもない願をひとつ、零す。

きっとこの空の下、
同じ空を見ているだろう誰かへ。






end

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