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45.ancients



鬱蒼とした森の先にそれは佇んでいた。
大きな石で出来た神殿。
それはまるで俺達の帰りを待ち侘びているかのようだった。




『ここが古代種の神殿…』




ミッドガルへ向かう途中、激しい頭痛に見舞われた。
脳内の奥に響き渡る激しいキンとした音。
それは左手に見えた森の中にある神殿から発せられているようだった。

近づくに連れてその音は一層高まっていく。




「…何かが共鳴している?」

『不思議だよな、セフィロスにもこの音が聞こえるなんて』

「…行ってみよう。俺達に関係する何かがこの中にはあるのかもしれない」




“星読み”の時と同じ音がしたんだ。
高周波の高いその音が。
セフィロスと共に神殿へと踏み出した。

中に入ると周りの壁に見たことの無い絵が描かれていた。
間違いない。これは古代種の、セトラの民たちが残した遺産だ。
見た目からしても何千年も昔のものであることがわかる。




『これは生命の記憶…?』




壁に触れるとより一層流れ込んでくる記憶の欠片。
目を通さず直接脳へと囁き掛けてくる。
俺達にまるで語りかけてくるような、そんな感じであった。

隣でセフィロスも何かを感じ取っているらしい。
瞳を伏せて声に耳を澄ませている。



そうだね。
ここは俺達の祖先の残してくれた場所なんだもんね。



召還獣と共に生き、神を祭りお祈りを捧げる絵たち。
それは共存の賜物。
マテリアや魔光を費やして生きる現代とは違う静かな営み。 

スバルはさらに奥へと足を進めた。
もっと知りたい、ただその一身で。





どれくらい歩いただろうか?


ずうっと続いていた壁の絵が一箇所だけ周りとは違う絵と変わっている。
遊牧民が酪農をする様や水を汲む平和の姿ではない。
これは何かから逃げ惑った風景。
人々は武器を手にそれに立ち向かっている。




これは、…隕石?






『ジェ、ノバ…?』




天からやってきた厄災が舞い降りた瞬間。
それがここに記されていた。


急いでスバルは振り返りセフィロスの元へと走り出す。
こんな絵を見せてしまえば彼は再び闇の中へ逆戻りしてしまいそうで怖かった。

もう絶望して欲しくない。
もう光を失って欲しくない。

走り抜けた先、彼は何食わぬ顔で先ほどの続きを手を伝い歩き聞いていた。




『セフィ!』

「…スバル?どうした?」

『え、いや…。なぁ、もう行かないか?今日中にコンドルフォートを抜けなければ先が辛いだろ?』



ここから北に越える先。
険しい山々が立ちはだかる。
その理由を背にどうにか早くここを立ち去ろうと促す。




「…そうだな、早くミッドガルに着きたいしな」

『な?そうと決まれば早く…「何を隠している?」

『…何もないよ?ただ疲れただけ』




見透かされていた。
同じ時間を過ごして来てしまったからだろうか、それともわかりやすい誤魔化し方だったろうか。
セフィロスはスバルを背に先来た方向へと歩き出し例の壁画の前で立ち止まった。




「…これを隠したかったのか?」

『……』

「構わん、もう知ってしまった過ちだ。裂けて通れない道に目を背けることはもう止めたのだ」

『セフィ…』

「これもお前のお陰なんだが…?」




…この人は変われたんだ。

アンジール、今のセフィロスをアナタに見せてあげたいよ。
スバルはセフィロスの手を取り2人でその壁画を見つめた。

天から舞い降りた宇宙外生命体ジェノバ。
彼女の襲来によって古代種の人々は多くの命を落とした。
強大な力を持った彼女をどうにかして封じ込めようと人々は力を合わせた。
陰陽の一族かて同じだ。
天へ向かって両手を突き出しジェノバを封じ込めようとしている姿はその姿そのものであった。

ふと、壁画の端に何か水のような何かが描かれそれは線のようにずっと続いており、地を這い向かい側の壁へと繋がっている。
スバルは恐る恐る視線で辿った。




『…こ、これはっ!!!』




同じような隕石が落ちてきた壁画。
その周りにはたくさんの陰陽師達が天から襲来したモノへと立ち向かいどうにか封じ込めようとしている。

…間違いない。


こいつは“ラヴォス”だ―――



こんな同時期に描かれているなんて。
この星を脅かす存在。
そうだ、俺達は先祖様たちが命がけで封じ込めた奴等を呼び起こしてしまったのか…。
自然と手の平に力が加わる。




「スバル…眠っているものもいつかは目を覚ます。生まれた者もいつかは死ぬんだ。

ならばそいつ等を終らせればいいことではないか?」




不適に笑う彼。
そうだよな、こんなところでくよくよなんてしている暇はない。
俺達に運命は託された。
だったら目を逸らさずにいよう。
例えこれが血塗られた道だとしても…
静かに頷き目をこすった。




『…みんな、行ってきます』




2人は再び空へと舞い上がった。
先代の方々に恥じぬ生き方をしなければ。
風を切り飛び去る。遥か北に鎮座する文明都市へと約束を果たすために…











end




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あきゅろす。
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