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25.succession






至福があればその代償も伴う…













神様はさ、なんて残酷なんだ―――…






















「なんで、なんで……」





腕の中には変わり果てた親友の姿。
人の形ではなく獣に喰われた変わり果てた身体。

ずっとずっと兄のように慕ってきた貴方が、大好きだった貴方が――

刀を交え本気でぶつかり合い、涙を飲みながら一線一線振り抜いた。

力は互角、

いや、

彼のが遥かに勝るはず



なのに………







「何泣きそうな顔しているんだ、だからお前は子犬なんだよ」



虚ろな瞳が宙をゆらつく。
ザックスは消えてしまわぬよう彼の紡ぐ一言一言を拾う。



「これでいいんだ…モンスターは消えなきゃならない」

「アンジールはモンスターなんかじゃない!!!!!
アンジールはっ…アンジールはっ…!!!」

「…翼が生えた人間はいない…翼が生えた人間はモンスターだ」

「違う!!!」



腕の中で浸蝕が早まる。
彼の身体からはミシミシと何かが軋み崩れる音が聞こえ嫌にリアルに響き渡る。



「ザックス…
俺はもうもたない…だから、俺のバスターソードをお前にやる」

「!?」

「…だが、今の情けない顔のお前にはこれはやれない」



白い羽根に包まれモンスターだった身体がみるみるうちに人であった姿に戻る。

直に見る程劣化が激しい。
髪は白髪へと変わり果て見るも無残だ。



無い力を振り絞りアンジールはバスターソードを天へ翳す。





「こいつは俺の夢と誇りだ。
ソルジャーとして生き、たくさんの想いを背負ってきた証」





幾多の死闘、戦友との想い、約束。
すべてがこのバスターソードに籠められている。



アンジールの生きた証…







「ザックス、迷うな。
自分の信じた道を突き進め。
暗雲が立ち込めようとも、お前には信頼できる“蒼い鳥”がいる」





バスターソードを降ろし柄を持ち直し胸元へ突き出す。










「誓えザックス


“夢を抱け、誇りを忘れるな”」



























……もう迷わない




自分の信じた道を突き進んでやる




















安心しろよアンジール




夢や想いも全部背負ってやるよ








決意を固めバスターソードを受け取り力強く返事を返す。
揺らいだ瞳はもうそこにはない。






「ザックス、俺は…モンスターか?」












「いいや、アンジールはモンスターなんかじゃない

天使だ、そして俺が尊敬する最高のソルジャーだ」



「…ありがとう」






その姿に満足したのかアンジールは安心した表情で微笑みザックスの頬を撫で瞳を閉じた。

直後羽根に包まれ彼は舞うように天へと還っていった…















「アンジール…夢や希望、全部見せてやるよ」






手の平に残るあったはずの温もり。
頬を掠れ舞い降りる白い羽根を感じながら
ただただ、茜色の空を見上げた。


end

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あきゅろす。
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