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26.allegience







大地の流れ








響鳴








星の輝き








…星の声………































「スバル様…」






ライフストリームに消えてから2日…

彼の身体はまだこの海の中。
タイムリミットまで後少し…

帰って来てください。
貴方の居場所、俺達がちゃんと作っておきますから。





「トラ、スバルは?」

「…ヒバリ」

「まだ中なのね?」

「マオ…………ああ」





暗鬼と恐れたれる3人。
本来は別々の環境、境遇に生まれ育った3人。
今ここで生きているのは主であるスバルがいたからこそ…





「不思議だよな」

「そだな…」

「最初はみんな敵だったしね…
まして、私達…スバルを暗殺しようとしてた」





皆別々の主の下で犬として人を殺してた。
そして次の標的がたまたまスバルだった。

だが、刃物を突き付けたスバルは嫌に冷静で、その瞳には恐怖の色さえなかった。
寧ろそれよりも強い絶望を知っている瞳をしていた。

直後、警備が厳重で俺達はウータイ兵に捕まり拷問を受けた。



今までやってきた大罪を掘り返され問いただされ…

約一ヶ月間続いた拷問と尋問。
皆見るも無惨な容姿に成り果てた頃、ウータイのダチャオ像にて公開処刑が執行された。



両手両足を縛り付けられ、大衆に見下され…生きた心地さえしなかった。




トスッ





「マオっヒバリっトラー!」

「…ユフィ?」

「こーんな可愛い子ウータイにはユフィちゃんしかいませんー!」

「はいはい(笑)」





元気よく抱き着いて来た女の子。
この子はスメラギ家の遥か遠い血縁、キサラギ家の一人娘。



あの日、処刑途中…まぁ身体には刀が刺さってはいたが、周りの反感を買いながらもスバルは3人を助けてくれた。

もう身体もボロボロで生気もなく俺達はライフストリームへと帰る寸前だった。

…残るのはプライドと敵への復讐に光る眼光。





彼の陰陽術による治療と…ライフストリームの力によって俺達は今生きている。

スバルの陰陽の血とライフストリームに浸されて変色した髪や瞳。
しかし、そのお陰で身体は元通りになった。
ただ、失明してしまった瞳だけを残して…


それから体力が回復するまで家で匿ってくれたのがユフィの家。
だからキサラギ家の者達は3人を毛嫌いするどころか、寧ろ親しいくらいだ。





「スバル様、まだ中なの?」

「ああ…」

「早く…会いたいな」



「………ああ」





…スバル。
喜びと優しさをたくさん教えてくれた貴方。
俺達は恩返しをしてもしきれない。
それなのに様付けをすると怒る貴方。





「…俺達は貴方の幸せを一番に願っている」

「帰って来なければ力付くでも迎えに行くわ」





主の為なら命も惜しくない。

それくらい俺達は忠誠を称えて誓っている。
それをスバルが望まなくとも。









































暖かい…





けど、それと同じくらい冷たい





悍ましい程呼び起こされる過去の記憶












刃物を突き付けられて切り裂かれるような感覚





内臓を刔られるような激しい痛み



人の冷酷さ

醜さ



すべてが頭の中を身体の中を渦巻く







………俺は強くなんかない


けど、俺がやらなきゃならない








―――…大丈夫







……え?









―――…………お前なら大丈夫だ












…………誰?












指し延ばされた腕

導くように優しく微笑む口元


顔は光に隠れてよく見えないけれど




貴方は……













未だ顔の見えない彼の延ばされた手を取る。

すると意思とは関係なく自然に瞳は瞼を下ろした。



その温もりは

優しさに包まれた心地よい温かさ……









これは貴方が生きた証…





そうか…


…ありがとう……






















「……………スバル、お帰り」



「後2分で夜明け、

ギリギリ3日以内だよー」





ライフストリームの中に浮く身体。
手の平に残る温もり。



ああ、夢じゃなかったんだね…



貴方の想い、アイツだけが背負うには重過ぎる。

だったら半分…俺が背負ってやるよ。





「ただいま… 」






いいだろ?……アンジール



end

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あきゅろす。
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