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21.leave



雪が溶ける音…


ひらひらと舞い散り揺れる桜


銀と蒼の髪が風に揺れる


























『これしか方法が無いんだ…』



郷の外れの水の祠。

魔力の強い者しか入れない場所。


緑の光が光る祠内にはライフストリームがあらわになり生命の音を立てている。




ニブル山に眠る他の星から来たといわれる細胞と似た、細胞が今この手の中に息づいていた。


陰陽の最大の禁忌として、
他者の手に渡らぬよう…







『トラ、3日だ。3日経ったら迎えに来てくれ』



結界の外で待つ金色の瞳へ言葉告げる。
迷いが無いと言えば嘘になる。

けれど入れなくれは…





これを………





      ………………体内へ










トラが頷くのを確認すると、
掌に乗せた細胞を胸に宛てる。

それに共鳴するかのようにライフストリームが波のように渦巻き連れ去るかのようにスバルを巻き上げ緑の大海の中へと飲み込んでいった……










数日前。



ウータイへと一人の男が舞い降りた。

彼は白き純白の片翼を持ち黒い髪をした男。
桜舞う中見詰めた瞳は、ザックスと同じ魔晄の色をしていた。



『貴方がクラス1stのアンジール?』

「…ザックスから聞いたか」

『あぁ、凄く親しげに話してくれたよ』



トリカゴの中に居た時、ザックスは昔の話しや親しい人達のことをたくさん話してくれた。
特に、彼に関して話すザックスは嬉々としてたことを覚えている。

それを伝えれば嬉しそうに微笑む彼。

しかし、桜が舞う中彼の翼から羽根が舞い堕ちている姿はとても痛々しい。





「…君は冴えているようだね」

『劣化…ですか?』

「俺はそんな長くない」



『…プロジェクトG』

「詳しいんだな」

『お互い様ですよ』



式神を飛ばして情報収集をしていて知ったそれ。






“プロジェクトG”






ガスト博士によって手掛けられ、人間の体内にG細胞を埋め込むという実験。
それは劣化が激しく、長くは保てない。
そのため、彼はリスクが高いが融合させれば絶大な成果が得られる“完全なるジェノバ細胞”を捜し求めてきたのである。
しかし、ジェネシスやアンジールはホランダーの手によって手掛けられ、ジェノバから母という過程を経て譲り受けた…


…だから完全体とはなり得なかった。





「見た通り、劣化は止めることができない。
いつか…いや、明日かもしれない、俺は近いうちにライフストリームへ帰るだろう…。
だから、奇跡の声を持つ君に会いに来たんだ」

『俺に?』



不思議そうに小首を傾げると意志の強い真っ直ぐな瞳が揺らぐ事なく真意を告げる。

薄々…魂の駆け引きを主とする力を持つものとしてアンジールの魂の波長が弱まってきているのに気付いてしまった。



「ジェネシスの企みはそう長くは続かないだろう。…しかし、問題はセフィロスだ。少しずつだがアイツは“違う存在”に気づき始めている」

『…ジェノバ』

「あぁ、セフィロスは今母親の名前と類似したその存在をつきとめようとしている」

『…っ!』






徐々に動き出しているんだ。

災厄の事態へと一歩ずつ前
進しだした運命に息を飲む。



「俺も詳しくはわからないがヤバイ事態になりつつあるのはわかる。だからこそ、正宗の片割れを持つ時の守護者であるキミの元へ来たのだ」

『アンジール…貴方はどこまで知っている?』













時の守護者――…





陰陽の力は時には“時”をも動かす







厳重機密を何故彼が……?





場合によっては廃除しなければならない。
必然的に殺気立つ、張り詰める空気。


だが、アンジールはただ表情も変えず坦々と話を進めた。




「そう気を立たせるな(笑)
1stにもなれば大量の機密を上層部からハッキングできる。…したくはなかったが」

『…アンタ嫌に真面目、だからな』

「褒め言葉として貰っとくよ」





ザックスから何度もアンジールは頭が固い固ーい(念入りに)と聞いていた。

その通りなんだなと小さく微笑むと、一瞬驚いた表情をするもすぐに温かな笑みで答え頭を撫でてくれた。





「…あー見えてザックスは弱い。
幼い頃から神羅に連れ出されてソルジャーとして育てられた。周りには大人しか居ない環境で、社会性だけを学んで子供としての心を押し殺して。
アイツは淋しがり屋なんだ…
だから君に、アイツを守ってやって欲しい」



温かな掌はいろんな想いが重なっていた。





きっとこれが……本当の優しさ……







「セフィロスも本当は悪いヤツなんかじゃないんだ。ただ不器用で自分の心がよくわからないだけ、誤解しないでやってくれ」



『……はい』





敵だ敵だとしか見てきていなかった。
ただ使命のためだけに殺気を向けていた。
けど、セフィロスは最初こちらに殺気を向けていたとしても殺そうとしたか?
否、それは間違いだったのかもしれない。



破壊だけがすべてか?

共存という形もあるのではないか?



彼の言葉のひとつひとつが脳内に響き渡る。


難しい顔で考えていたのか突然アンジールひ頬っぺたをひつぱられた。





「頭で考えるな。考えすぎて答えがわからなくなるだろ?

だったら自分が信じた道に見を委ねればいい。スバル、お前はお前だ」



屈み顔を覗きながらくしゃりと頭を撫でてくれたその暖かさ。
欲しかった言葉に涙が溢れた…。

お前等はまだまだ子供だ、と。
仕方ないな、と。
涙を拭い額にキスをしてくれた。













ふわり………



アンジールは宙へ舞う。

スバルは涙を拭い空を見上げ手を翳した。








「不規則な鼓動、獣に喰われた身体。スバル、俺は醜いか?」

『違う、アンジールは天使だよ。
モンスターなんかじゃない』

「…ありがとうな」

『また、ね』



飛び去る背中へスバルは精一杯、導きの風と声をを捧げた。

そして、共存させる道を選ぶのならと祠に奉られているもう一つの禁忌に触れなきゃならない。





“ジェノバ細胞”





そして、もう一つ





“ラヴォス細胞”










ジェノバと唯一同じ力を持った存在。
宇宙からやってきた生命体。












『俺はみんなを守りたい』



掌にあったソレは、
胸を食い破った。


END

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