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黒バス小説(年齢制限なし)
洛山みんなで投票に行こう!
 最近忙しくて全然小説を書けなかったのですが、期日前投票に行って大行列に並んでいる間にふと思いついてしまったネタです。
 今回の衆院選、突然の選挙で各方面の方がご苦労されたと思いますが、選挙年齢が18歳に引き下げられたことに伴い、今は高校生も投票に行く時代、非常勤嘱託員や臨時職員として学生さんを募集して従事していただいている選管も多いと聞き、忙しさを萌えの力で吹き飛ばそうと思い、選挙ネタ書いてみました。
 注意!
 筆者は京都市選挙管理委員会とはなんの関係もありません。選挙管理委員会のあれやこれやも世間話の範囲内でどこかで聞いたことやインターネットで知った程度の浅い知識で書いています。
 政令指定都市で実際にどう業務を進めているかも知るよしもないので完全にフィクションです。
 想像です。
 実際の選挙とは関係ありません。
 選挙ネタとキャラ萌え混ぜて不快に思われたなら申し訳ありません。
 モブが少々出ます。
 一応腐ってはいないつもりですが、黛赤黛思考なので無意識に醸していたらすみません。
 大丈夫な方はどうぞ。
 選挙権をお持ちのみなさん選挙に行きましょうね!






 洛山高校男子バスケ部。
 開闢の帝王と呼ばれる彼らの寮ではちょっとした騒ぎが起きていた。
 かつて無冠の五将と呼ばれた高三の三人の郵便受けに入っていた一通の封筒。
 その表面には選挙 投票所入場券在中と書かれている。
「何これ?」
「投票所入場券?」
「たしか18歳から投票出来るようになったのよね」
「でも日曜は試合じゃん!無理じゃね?」
 平成27年6月、公職選挙法等の一部改正が成立し、公布されたことにともない、平成28年6月19日以降の選挙から選挙権年齢が満18歳以上に引き下げられた。
 昨年(2016年)は7月に参院選があり、今年も2月に京都市府議会議員選挙が行われていたが、昨年洛山で三年生唯一のスタメンだった男は3月生まれであり、誕生日が来ていなかったので高校生のうちに選挙を経験することはなかった。  
「ちょっと封筒を見せてくれないか」
 無冠三人と一緒にいる洛山高校バスケ部主将の赤司は高校二年なので、もちろん彼には投票所入場券は来ない。
「おう、いいぜ」
 根武谷に借りた封筒を珍しげに眺め、仕事や旅行で投票日に行けない方は期日前投票をと呼びかける文言を見た赤司は封筒を根武谷に返した。
「ありがとう。選挙は午後8時までやっているようだから当日帰って来てからでも間に合うかもしれないが、万一帰りが遅くなってせっかくの権利を行使出来なくなっては大変だ。今から行けば期日前投票の受付に間に合うから行って来たらどうかな」
「えー今から?」
「腹減った」
「アンタさっきゲップしてたでしょ!征ちゃん悪いけど一緒に来てくれない?私一人でこいつら引率するの無理だわ」
 黛が引退した後、PFのレギュラーになった現三年の浅葱は黛とはまた別の意味で赤司や無冠の三人とは距離を置いて接していて、お互いにあまり仲がよくない。strkyの試合観戦の際にもレギュラーで一人だけ見に来なかったり、なんだかんだ嫌な顔はしながらも一緒に行動してくれていた黛とは違う。
 通知が来ていれば一緒に選挙に行こうと誘ってもよかったが、彼はまだ誕生日を迎えていないらしく通知が届いていなかった。
「かまわないよ」
 こうして四人は連れ立って京都市役所内に設置された期日前投票所に足を運ぶことになった。
「選挙ってさ、池袋じゃデパートで出来るらしいよ。こないだテレビでやってた」
「お買い物のついでに投票に行けるのは便利ね。人出も多くて混んでそうだけど」
「池袋区すげえな」
「池袋は豊島区だよ。デパートと協定を結んだそうで、新聞にも出ていた」

「期日前投票の方はこちらです」
「うわあ!」
「用紙記入済みの方、拝見します」
「ええ!?」

「なんかさっきから誰もいないとこで騒いでる人がいない?」
「ほんとだ。市役所で騒ぐ奴の気がしれねえ」
「私、あの声どこかで聞いたことがあるような気がするんだけど、どこだったかしら・・・」
「お前ら封筒を開封もせずにそのまま持って来てんじゃねえよ、開けろって書いてあるだろ。貸せ」
「きゃあ!」
 グレーのスーツ姿でスッと現れた黛に実渕はうっかり悲鳴をあげた。
 昨年数ヵ月の付き合いで慣れたつもりだったが、久しぶりに会うので耐性が薄れたらしい。
「黛さん、こんばんは。ご無沙汰してます」
 微笑みを浮かべて挨拶した赤司に黛は舌打ちした。
「黛さん、市役所で働いてんの?バイト?」
 手を出した黛に首をかしげながら封筒を渡した葉山は、黛がレターオープナーでシャッと鮮やかに封筒を開封して返すのを慌てて受け取りつつ聞いた。
 黛はたしか京都の大学に進学したはずだった。
「市役所じゃなくて選管でな。早くしろ」
 黛の腕には京都市選挙管理委員会の腕章があった。
 選挙管理委員会は自治体の役場などの場所を使用している行政委員会だが、臨時職員や非常勤嘱託員の採用は独自に行っているので選管臨時職員と市の臨時職員はイコールではない。
「待って、開かない」
「お前な、なんのためにオレがレターオープナー持って来てやったと思ってんだよ。お前らが未開封の封筒そのまんま握りしめて来たのが見えたからだろうが」
 実渕から封筒を受け取ってレターオープナーで開封して返す黛の動きには一切ムダがなかった。
 ミスディレクション習得のために身に付けた観察眼は仕事でも役に立っているらしい。
 ちなみに根武谷は封筒をびりびりに破って開けていた。
「オレそろそろ交代時間だから説明してやる暇ないけど赤司がいるなら大丈夫だな。そこの記載例見て記入漏れのないよう教えてやってくれ」
「分かりました」
 期日前投票の手続きで記入する宣誓書の記載事項はそれほど多い訳ではなく、難しいことを書く訳でもなんでもない。
 空欄をいくつか埋め、記入を終えると列に並ぶ。
 選挙人でない赤司は投票所に入れないので出口で待つことになり、別行動する。

「なんか思ってたより簡単だね?もっと難しいのかと思ってたけど」
「こんばんは、書類お預かりします」
 黛のものと同じ腕章をつけた係員に宣誓書を渡すと、書類のバーコードを読み込んで選挙人名簿との照合が始まる。
「こんばんは!」
(選挙人名簿との照合は二人体制でダブルチェックする選管もあれば、一人で照合確認を済ませるところもある模様ですが京都市はどっちなんですかね?)
「お待たせしました。次は小選挙区です。投票券交付係へお進み下さい」
 係員から書類を返され、葉山はふと立ち止まった。
 実渕は今バーコードを読み込んで名簿との照合中、根武谷はまだ入口にいる。
 投票券交付係と書かれた机は見えるが職員は席を外しているのか誰もいない。
「えーと?」
「宣誓書を出して下さい」
「うひゃあ?!」
「他の選挙人の迷惑になるから静かにしろ。宣誓書を出せ」
 席を外しているように見えた投票券交付係は黛だった。最初から席にいたが、葉山に気づいてもらえないのにしびれを切らして自分から声をかけてきたらしい。
 他の状況なら無視しそうだが、さすがに臨時職員とはいえ給料を貰う仕事でいいかげんなことはできないのだろう。
 黛は淡々と書類を見て、最初に受付をした係とは違う色の色鉛筆でサッとチェックすると葉山に投票券を差し出した。
「候補者名をご記入下さい。その投票箱に投票したらあちら比例区の投票券交付係にこの用紙を出して下さい」
「えっ?いっぺんにいろいろ言わないでよ〜」
 黛は舌打ちした。
 赤司がいるから大丈夫だと思ったが間違いだった。よく考えたら選挙人ではなく、介護が必要な人の介護人でもなければ両親と一緒に来ている小さな子どもでもない赤司が投票所に立ち入る訳にはいかないし、いかに赤司がチートでも自分が見たこともない投票所内の進み方など教えられる訳もない。
「これは小選挙区用の投票券だ。ここに候補者の氏名を記入する。終わったらそこの投票箱に入れろ。入れるのはピンクの用紙だけな。宣誓書は次の比例区の受付でまた使うから間違って一緒に入れんなよ」
 段々言葉使いがよそ行きでなくなってきた。
 並んでいる人の視線がやや痛いが、洛山の制服を着ている葉山が高校生であることは一目で分かるし初めての選挙でいかにも不慣れなんだろうなということも黛が若い学生バイトなのも期日前投票に慣れた大人には自然と分かる。
「お待たせしました。候補者名をご記入下さい」
 いつも期日前投票に来てるから大丈夫、と説明を遮った大人の次の選挙人が実渕だった。
「アタシ急いで来たから候補者誰が誰だかさっぱり分かんないんだけど」
 実渕の言い草にお前何しに来たんだと呆れつつも黛は無表情で机の下から選挙公報を取り出す。
 他の係員は選挙公報置き場にサッと取りに行く人も多いのだが黛がそれをやると選挙人がもれなく黛を見失う。職員が消えたと騒がれるのは面倒くさいのでなるべく動かずにすむよう工夫しているのだ。
「ロビーにも設置してるんだけど、これやるからじっくり考えろ。候補者名を記入してその投票箱に投票したらあちら比例区の受付へどうぞ」
 次の選挙人は根武谷だった。
 げんなりする黛に根武谷は言った。
「あんた仕事何時に上がれるんだ?終わったら牛丼食いに行こうぜ」
「おい、私語は禁止だ、他の選挙人の迷惑考えろ。候補者名を記入してその投票箱に投票したら比例区の受付へどうぞ」
 自分の目の前にはいなくても、投票所内にはまだ他の選挙人もいる状況で係員が知人と私語などするのはもっての他だろう。
 黛が注意すると高校時代は黛の言うことなど歯牙にもかけなかった根武谷もさすがに空気を読んで口を閉じた。
 8時ちょうどをお知らせします。ピッピッピッ、ポーン
 8時の時報とともに選管職員が投票所の入口を閉鎖する。
「キャー、閉まっちゃった?!」
 実渕が慌てて小選挙区の投票を済ませると比例区の受付に移動する。
 入口を閉鎖した後はその日はもう新規には受け付けを行わない。
 黛は小選挙区の投票券の発券枚数を付箋紙にメモすると、内心いやいやながら比例区受付の手伝いに行った。
 選挙名簿対照係は入口閉鎖の後はロビーにいた係員とともにロビーの撤収作業、小選挙区の交付係は自分の持ち場から選挙人がいなくなった後は比例区の手伝いという役割分担が決まっている。
「こちら最高裁国民審査です」
 比例区の当番が政党名をご記入下さい、と言った横で黛が国民審査の用紙を渡す。
「あっそうか、衆院選だから国民審査もあるんだね」
 何度も期日前投票してるから慣れてると言い切ってたさっきのオッサン、もとい男性に聞き返される。期日前投票自体の経験は多い人でも、一種類しか投票しない市長選と違って、衆院選は交付される用紙の種類も増えるので基本に忠実にやらないと間違いのもとだ。
「そうです、記載台で記入終わりましたらあさぎ色の比例区の用紙は手前、国民審査の用紙は奥の投票箱にお入れ下さい」
 そこへ小選挙区の投票を済ませた根武谷が来た。
「政党名をご記入下さい」
 比例区の当番が投票券を交付しながら回収した宣誓書にチラリと視線を動かした。
 赤司に特訓された成果で、何を言いたいか黛には理解出来た。
 宣誓書の集計をしないと〆が出来ない。
「こちら最高裁国民審査です」
 国民審査の用紙を根武谷に一枚渡しながら、比例区の当番だった人に後はオレが、と目で合図する。
「これどうすればいいんだ?」
 この質問はよくある。
「やめさせたいと思う裁判官に×、特にやめさせたいと思わない場合は何も書かずにその投票箱に入れろ。比例区は浅葱色、国民審査はうぐいす色だから投票箱間違うなよ」
 二枚重ねて同じ投票箱に入れようとしたり取り違えて入れようとする選挙人も案外いるので投票立会人も気をつけて声をかけてはいるが、投票券交付係から説明する時に注意出来ればそれに越したことはない。
「浅葱色ってなんで浅葱色なんだ?水色と違いがわかんねえんだけど」
「オレに言うな。国政選挙の投票用紙の色や文字色は国が決めてるからオレに言ってもしょうがねえよ」
 色が薄くないと候補者名や政党名を記入した字が見づらいとかいろいろ事情もあるらしい。
「ふーん」
「なあもうお前だけだぞ早くしろよ」
 選管職員の視線が痛い。
 最後の選挙人がモタモタしていて投票所を閉鎖出来ないのは困るのだろう。
「集計はそっちでお兄さんがやって。何かご質問等ございましたら記載台のところでご説明しますので」
 影が薄く、他の係員に名前を覚えてもらえない黛はおばちゃん、もとい40〜60代らしき女性の同僚達にお兄さん、とかお兄ちゃんと呼ばれている。年下のかわいい妹キャラにお兄ちゃんと呼ばれるならご褒美だがおばちゃんに言われても全然嬉しくねえと思いつつ、ベテランの指示に従う。
 選挙人が特定の職員に話しかけて業務が停滞しそうな時、他の人間が代わって対応するというのは選管に限らずよくある方法だ。
 根武谷はそこにいたのが黛だったから口実をつけて話しかけたかっただけで、他の係員にまで特に聞きたいことはなかったらしく、若干肩を落として記載台に移動した。
 小選挙区の投票用紙自動交付機の数字と比例区の投票用紙自動交付機の数字、最高裁国民審査の投票用紙の払い出し枚数は全て一致している。
 回収した宣誓書の枚数は10ずつの束を100ずつに束ねてあり、10未満の束には付箋紙に枚数を記し、数を合計して一日の累計を出し、集計表に転記する。
「お疲れ様でした」
 投票立会人が根武谷に声をかけているところを見るとやっと終わったらしい。
「投票所を閉鎖します。お疲れ様でした」
 選管職員が投票立会人の面前で投票箱に鍵をかけ始めた。これが終わらないと立会人も帰れない。
「お疲れ様でした。最後の方、背が高い子多かったね」
 高齢者らしい白髪の立会人が腰を伸ばしながら言っている。
「臨職のお兄さんの知り合いみたいよ」
「どのお兄さん?」
「今回の選挙で初めて来た子の方。二月の選挙にも来てた子より背が大きいんだけど、ロビーに出るといるんだかいないんだか分かんない感じなのよね。でもパソコンが上手で名簿対照は安心して見てられるわ」
 白髪の年配の人から見ると18歳の黛は子どもか孫扱いである。
「・・・お先失礼します」
 投票事務や立会に従事する任務から解放され噂話を始めたおばちゃんやおばあちゃんを横目に投票所を出た黛は出口で足を止めた。
「やっと終わった?黛サーン」
「選挙って結構並ぶのね」
「牛丼食いに行こうぜ、腹減った」
「・・・おごらないし割り勘もしないからな。自分で食った分は自分で払うならいいが」
「ケチ」
「かわいい後輩におごってくれないの?」
「誰がかわいい後輩だ。今回のバイト代はこいつの誕生日プレゼントの資金源になる予定だから、びた一文出すつもりはねえよ」
 厨二の魔王と一人になったわりにはすっかり丸くなった赤司の頭に手を置いて、長く待たせたことをねぎらうと赤司は嬉しそうに微笑んだ。
「ダメだ、これ黛さんにたかったら赤司に恨まれるやつじゃん!」
 大学生の黛にたかる気満々だった葉山が絶望したように言った。
「あと二ヶ月で誕生日ですもの、そりゃプレゼントぐらい考えるわよね」
 黛が自分をバスケ部に呼び戻した赤司を特別枠に置いていることは三人も知っている。
 WC決勝であんな扱いを受けても特に態度を変えない黛は大人だとも思っている。
「おかしいな、なんか飯食ってもいないのに胸焼けして来たぞ?」
「甘すぎる〜、オレらには塩対応だったのに赤司にだけ目が優しい!」
 市役所のロビーで騒ぐ根武谷、葉山をジロリと睨んでから黛は小さな紙を差し出した。
「お前ら初めての投票だろ。これ、投票済証明書。つっても記念の紙っぺらって感じで証明書とは言いながら法的証明力は何もないが、いるなら一枚ずつやる。いらないなら返してくるけど」
 一応先輩らしく先輩面して投票済証明書を見せた黛に葉山、実渕、根武谷は神妙な顔つきで小さな紙を受け取った。
 ちなみにこの証明書は本当になんの効力もなければ特に書式が決まっている訳でもなく、自治体によりまちまちなので、別々の自治体に住む知人に頼んでもらってきてもらって見せてもらうとなかなか面白い。
「ありがとう。でも征ちゃんはもらえないのにアタシたちだけごめんなさいね」
「投票してない人間がもらうのはおかしいからそれは仕方ないよ」
 頭では納得して、そう答えながらも寂しそうにしていた赤司が初めて投票済証明書を手にしたのは、次の国政選挙の時である。
 衆院選の働きぶりを評価された黛は選挙管理委員会の臨時職員として選挙のたびに従事することになり、赤司に投票済証明書を交付したのはやはり黛だった。



【終わり】
         

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