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雪夏塚〜セツゲツカ 姫崎綾華編_第六話 変化(その3)
 綾華の言っていることは本当だ。庭にいた綾華は、靴もはいていなかったのだ。
 本人も気づかないうちに、綾華は本を取り落として庭に出たということだ。

「・・・夢遊病みたいなもんか?」
「寝てもないのに?白昼夢とでも言うの?」

 攻めるような口調で、綾香は返す。が、すぐに語気は弱まった。

「イヤだよ・・・そんなの。私・・・どうなってるの?」

 それを見て、槙人は溜め息をついた。

「とにかく、暫く様子を見よう。一時的なものかもしれないし、続くようなら、やっぱ医者にな」

 話を切り上げて、槙人は立ち上がる。
 だが。

「待って!!」

 部屋を出ようと背を向けた時、槙人は綾華に服の裾を掴まれた。

「綾華?」
「行かないで」

 不安に満ちた目で、槙人に懇願する。

「お願い・・・今だけでいいから・・・そばにいて・・・」

 その言葉で、気づく。
 本当に自分は、鈍感だったんだと。
 そう、本当は、とっくに分かっていたから。
 槙人は綾華に向き直ると、優しく笑いかけた。

「大丈夫だ。綾華」

 そして、床に両膝をついて、綾華を抱き寄せる。

「今だけなんて言わなくていい。一生・・・そばにいる」
「お兄・・・ちゃん?」

 すっと体を離して、槙人は綾華を見つめる。

「綾華。俺は・・・お前の事が、好きだ」

 正面からはっきりと。槙人は、綾華に告白した。
 綾華の心。
 幼い頃の約束をずっと守ってきた。最高の友達を作って、いつでも全力で笑っている少女。
 それがこんなに脅えているのに、どうして放っておけようか。一緒にいると、心に決めたのに。
 そう、その時から決まっていた。
 ただ、気づかないふりをしていただけで。
 守らなければならない。けれど、それ以上に、
 守っていたい。
 それが槙人の本心だった。

「ごめんな・・・気づいてやれなくて」

 今こそがそばにいなければならない時だったのに。
 自分を殴ってやりたくなる。

「・・・う うん。そんな事ない。嬉しいよ。だって・・・」

 綾華は槙人に抱きついた。

「ありがとう・・・お兄ちゃん!」

 綾香の顔を伝う、それは。
 槙人が島に戻ってきて、初めて見る綾華の涙だった。


「ふ・・・・ん」

 唇から綾華のぬくもりが伝わる。
 始まりは、どちらかという訳でもなく。
 ただ、自然に。
 初めは触れ合うだけのキスだったが、それが、次第に熱を帯びる。槙人の舌が綾華の口内に侵入する。

「ん・・・んん!」

 綾華の舌を絡め取りながら、槙人は綾華の胸に触れた。福の上からでもその柔らかさが分かる。

「ぷぁ・・・」

 綾華は口を離した。つっと。唾液が糸を引き、切れる。

「綾華、本当にいいのか?」

 触っておいて今さらと思ったが、槙人は綾華に訊いた。
 体調のこともあるが、何より自分でよいのかと思ってしまうのだ。
 だが、綾華は微笑んで頷いた。

「うん・・・。不安だから・・・お願い」

 自分がどこにも行かないように。繋ぎ止めておいて欲しい。綾香の目が、そう語っていた。

「・・・ああ」

 槙人も笑って、綾華をベッドに横たえて、その上に覆いかぶさった。

(省略:このあとアダルト小説になる)

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