食べ足りない(仮題)
*
衝撃に頭がジンジンくらくらしながら、涙目でその人を見れば
はちみつ色の肌に黒いカラスのような髪
そして、グリーンにナッツを散らした様な目をした
20代半ばの、女性であった。
顔立ちは、綺麗だが特別美人でもなく
ただ、その目が 見るものを惹き付ける 意志の強さを持って
ぼけぇー、と見惚れていると
彼女は、鼻息荒く一息ついて よろめきもせず、立ち上がった。
さっき、朦朧とした意識の中 そういえば かなりの量の血を 自分は吸っていたハズなのに
それを匂わせもせず
「…」
しばらく、何も言わずコチラを見つめた後
「今度は、行き倒れるなよ。後、人は殺すな、かじるくらいにしとけ」
と言い捨てて、ゆっくりと歩き出す
人魔問わず、命を救うような変な人間
去っていく後ろ姿を呆然と見送りながら、
歩いていく方向を確認し、姿が見えなくなってから なんとなく
同じ方へと足が、進んでいった。
黒い森を背景に、彼女が去っていった王の都へと
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