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食べ足りない(仮題)
金の原





日に輝く枯れた金の原を進む赤


真昼の太陽に照らされ、カラカラに乾いたススキが、カシャカシャと音をたて

合間をすり抜ける度にむき出しの二の腕やら手の甲を引っ掻いていく


くるぶしまである、うっとおしい長い深紅のスカートをファッサ、ファッサとさばきながら悪路を進む


このスカートを切り落とせば、歩みは早いのだが虫に刺されるのだ


それに この一着は、見た目より涼しいので気に入っていた


額に汗水たらして、黙々と前に進む

目的は金の原向こうの、影のように黒々とした 森


本当は こんなドレスではなく、



そう頭を過ったとき、視界の端に 金の原より輝く、白銀のような金が映りこんだ。




思わず、立ち止まり

振り向き、しっかりと その姿形を見て、後悔した


だって、


それは 人の形をしていたから





立ち止まった足が、進まない。

未練がましく、森を一目見て、亀のように 重たげな足取りで そろり そろりと、にじり寄っていく


人か 死体か それ以外か



相手の、手の届かぬ距離に陣取って 声をかける

「…おい、」


生きてるか 死んでるか


「起きよ、起きられよ」

揺さぶりも、触れもしないが


赤いドレスの腰、いくつかぶら下がった似合わない皮の 水筒を掴んで


引き抜いた栓を片手に、浴びせかける

「ンぐっ…?、!」


ようやく、人の形をしたものがみじろぐ。

まとった、黒に近い青のマントが体にまとわりついて、盛り上がる



思わず、半歩後ずさりながら、白銀のような金髪をした 何かが 人か 否か見極めようと、目を細める


「…ァ、つぅ!!」


布に染みた水が 肌に触れたのか

くたばり損ないの、 それは飛び起きた。







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