アクマ * . そうして、馬車の速度が緩み 石の土台に深緑の檻のような背の高いフェンスを越えて、どうやら屋敷の庭に入ったようだ。 ところどころ草が繁り、バラが荒れて雑草のように見える。 車輪がギュイイと甲高い悲鳴を上げて ゆっくりと止まった 取れた窓の戸を嵌めなおし 暇潰しに外の景色を見るのを諦めて おとなしくしている事にする 馭者役の主が席を降りて、こちらに回るのがわかって まるで、はじめてヨソの家に預けられた猫のような気分になりながら 待つ 入り口が開いて、窓が外れた時と比べ物にならない陽光が目に刺さる。 ふと、差しのべられた手に 面食らいながらしばらく考える 私に手助けか すると、焦れたのかその手が私の脇に差し入れられ まるで幼い子のように馬車から降ろされたのだった。 そのまま ポンポンと頭を撫でられ、主が目線を合わせるかのように腰を落として、にっこりと微笑む わけがわからないよ 何事か、としばらく見つめあっていたが おもむろに主は立ち上がると 「しっかし、ばっちいなァ?まずは風呂だな」 と言って また 頭をぽんぽんと撫でた。 . [*前][次#] [戻る] |