アクマ
*
器用にナイフを操って缶詰をひとつ空にし、主は考えているようだった
二つ目の豆の缶詰に手を伸ばし、それを半分平らげるとゆっくり言葉を選んで話始めてくれた
「…聞いた話だが、」
それは、噂話
「むかし近衛騎士のご子息が、出世のために悪魔を手に入れたそうだ、
彼は ある実験に手を出したが、それは手に負えるものではなくてな」
ゴクリと豆を飲み込んで、主は私を見つめる
「ほう、うわさ話ですか、それから?」
「ああ、結果だけ言えば、彼は死んだそうだ。悪魔の力をコントロール出来ずに」
よく聞く話だと、とぽつりと思う。だが私の知っている話は近衛騎士ではなく貴族で、
…彼は、王族に連なる尊いお方だった。
「アクマは、力の固まり、異世界から呼ばれたもの」
「それから?」
いつの間にか話が終わって、それくらいかなと呟いた主に噂話だけかよ、と落胆する
実質、何も知らないに等しいじゃねーか。
「チッ とりあえず、アクマにもランク付けが在ることからお話いたします」
機嫌が悪そうな私に、食べるのをそっと止めて主は音を立てずにテーブルにナイフを置いた。
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