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アクマ


(視点ナシ)

***





悪魔は、土下座されたことに眉間にシワを寄せ、「お断りだね」と不機嫌に吐き捨てた。


「その顔と体で面食いな魔女でも捕まえろよ。」

その言葉に視線を会わせないまま青年は口をひらく


「…足りない。そんなもんじゃ、足りないんだッ、」

切羽詰まった声。アクマはその発言に目を細めて見下すように呟いた。




「死にたいのか?」


「っ、!」


緊迫感。ぎしりと、青年は体を固くした。それを承知しながらアクマは、さらに語りかける


「前の主人は、死んだ。お前みたく力を欲しがりすぎて。」

青年が一言も口をきけないまま聞いているのを良いことに、ただ事実をかいつまんで

「風船みたく膨らんで破裂したいのか?」

と、優しげに微笑んだ。






「はらわた弾け飛ぶんだぞ。」


「あたりはぐちゃぐちゃの肉と血塗れになる」


青年が視線を寄越したのに気付き、その様を教えてやりながら畳み掛ける。





「…、そ れでも、」

まるでなにかに耐えるよな顔をして青年は食い下がった。

「…」

空気を震わせ、真摯にアクマに向かい合う。



「助けたいんだ、」

絞り出した声は苦しげで

「、誰を」



「…妹を、」

ひたむきだった。



「…、ふぅん?」

アクマはだだ先を促すように口を挟まない、


「このままでは、只、死ぬだけと…まだ …七つにも」

かすれ ささやくような声なのに静かな牢内に響いて、耳についた。地面を睨み付ける青年の顔は見れはしないが、

彼の肩が…少し震えていた。


アクマはそんなふうに泣く男を、初めて微かに哀れんだ目で見た





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あきゅろす。
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