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アクマ




そうして音の方に視線をやれば逆光でわかりづらいが、小柄な悪魔が見えた。


看守が、黙り込んだままガチャガチャと鍵を開く。


予防の呪いや、お守りを出さない事から何か牢に仕掛けでもあるのだろう


「どうぞ、中へ」

扉を開きながら、静かに看守が牢の中へと誘導する。

「…ああ」

地下に降りてから、ようやく口にした声は 何だか喉に張り付いて、掠れているような気がした。


格子戸をくぐり一歩牢にはいると、ムワッとかび臭い。
部屋の隅でカサカサと虫かなにかが逃げていくのがわかった。


悪魔は口を開かない、ただサイコロのように真四角の箱に腰かけて、こちらをみている。


近くに居るだけで背筋がしびれてくるような気がする、だが逃げるわけにはいかない。


「…わたしと、契約してくれ」

意を決して伝えた言葉は、なんだか頼りなく、




「…っは、」

悪魔は嘲るように、鼻で笑った。


ようやく目がなれてきた薄暗がり、廊下より明るい牢の中

逆光から壁ぎわに軽く身をひいた悪魔は、年頃の少女の姿をしていた。




あまり日に当たらない廊の中よく目をこらせば、白い肌に鉛のように鈍く光る瞳。

黒くうねる髪は肩のあたりで切り揃えられ、窓からの日に透けると青みががって、気の強そうな猫目はひどく不機嫌そうに、こちらをじろじろと見ていた。






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