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アクマ




 三ヶ月ほどの短い夏
けれど、地下にもぐると肌寒い。

悪魔研究室の事務室から歩くこと30分、青年は看守について長い道のりを歩いていた。

洞窟のような四角い石造りの長い長い廊下は空気がしっとりとして、四隅は苔むしていた。


ほの暗い通路の唯一の明かりは、左手の牢屋と牢屋を繋ぐ、一本の筋のように細長い窓からの自然光だった。


いくつもの空の牢屋は、かび臭く ほんとにこんなところに悪魔がいるのか疑わしくなる。
むしろ亡霊でも出てきた方がお似合いだ。


静かな牢獄は足音を空間いっぱいに響かせ、ふと、白いものにぶつかりそうになる、看守が立ち止まったのだ。


向こう脛までの上着をさばきながら、つとコチラを振り返る。
青白い顔、白い前髪の間からのぞく濃紺の瞳は痛いほど緊迫していた。




「…つきました、」
地下に降りてから、一言も口を開かなかった看守が横目で青年と牢を伺いながら切り出した。


「失礼ですが、本当によろしいのですか」


尋ねた声色はやや低くどこか固かった。青年は、ぐっと空気を飲み込みうなずく。



そうして、看守が牢に視線を投げると、ジャラリ ジャラリと中から生き物の気配がした。





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