マオユウ 03 それは魔窟と呼ばれる洞窟ダンジョンで、もともと最奥の聖剣目当て入ったものの、ボスを倒さないと手に出来ず、 なんとか打ち倒した後、見つけた小さな命。 近づこうと手を伸ばせば、虫の息の男が死に物狂いで守り最後までかばおうとした、そいつのまだ生まれもしてない子供だった。 「それで、ようやく気づいたんだわぁ…。彼らにも生活や家族。命があって生きてるって」 ひどい話だろ、?と苦々しく、どこか後悔した声に魔王はキュッと唇を噛んだ。 そう、人間は それを認めない。 同じ地に生き、かつては精霊と呼び共に生きた昔の話を聞いたことがある。けれど、 互いに小競り合いが起こり、搾取し搾取され、そんな些細な物が積み重なり 深い溝が出来てしまった。 「だからさ、せめて身内にでも…届けたくてな」 「八つ裂きにされるよ」 呟くような声にそう返せば、うわあ…とふざけた返事が返ってきて、思わず睨み付けるように視線をやれば、「帰りたかったな」と空気に消え入りそうな声で勇者はささやいた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |