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「ん……」
「あ、おはよーハクアちゃん!太陽が暖かい良い朝だよー♪」
「……地獄級にダルい朝だ」

支度をしていると、おいらの後ろからそんな会話が聞こえてきた。うん、確かに足元がおぼつかない。次からエルゼちゃんの料理は封印しよう。

「ん、そういや碧は?」
「あぁ、碧ちゃんなら起きて早々近くの川に行ったよ。何とも気分が悪いって」
「正論だな……御愁傷様だ」
「誰が御愁傷様だって」
「あでっ」

ハクア君の後ろから現れた碧ちゃんが頭を軽く小突く。痛いぞ碧、と言えば「お前の頭が御愁傷様なんじゃないか」という何とも痛い返事が返ってきた。

「碧ちゃん、おいら正常な朝御飯が食べたいな」
「その辺りの木の実でも食っとけば良いだろ?」
「酷いなぁ、川に行ってたのなら魚の一匹くらい取ってきても良かったのにぃ」

ぶー、と頬を膨らますと、両手でそれを押された。空気が口から漏れるのを見てエルゼちゃんがケラケラと笑う。むぅ、あまり楽しくない。

「とにかく、新しい町には来たけどこれからどうするんだ?」
「んー、良い感じにお金も貯まってるし、いっそこの辺りに住むのも」
「アホか」
「いだっ!……酷いなぁハクア君、何で冗談だって分かってくれないのぉ」

冗談でも今は贅沢な事言うな、とハクア君にダメ出しされる。ちぇー、でも確かに気分もよろしくないもんね。

「先に宿の確保だろうな。それからはまたソアにここの情報をまとめてもらって作戦を練るか」

碧ちゃんの指示にみんなが頷く。そんな中、おいらは「せめて今日くらいは宿で休まない?」と提案した。

「四人が泊まれる分の金は普通にあるな。それに俺も普通の飯が食いたい」
「普通のご飯?エルゼ作るよ?」
「エルゼは作らなくて良いんだぞ?」
「でもエルゼ、宿に居た時は料理出して美味しいって言われてたもんっ」
「……その人こそ御愁傷様なんじゃないかな」

エルゼちゃんを除くみんなが冷や汗を流す。もちろんそれはおいらもであって、えへへーと軽く笑う事しか出来なかった。





「もふもふーっ!やっぱり良いなぁ宿屋のベッドって!」
「天国だよな……」
「昨日リアルに天国見た人間が言うのも何だけどな」
「みゅ……エルゼも天国見たかったなぁ」
「良いもんじゃないぞ」

朝だってのに早くも宿に泊まる事になったおいら達。碧ちゃんが「今日だけだぞ」とお許しをくれたから、今日一日だけは休憩しようと思う。

「おいらはしばらく寝るよぉ、起きたら情報収集行くからー」
「今行け」
「げふんっ」

碧ちゃんに背中を蹴られた。良いじゃん休憩したって!

「……あのねぇ、せっかく早めに宿屋に居るんだからもっとこう、宿屋とお友達になりたいというか」
「ならんで良い。ハクア、俺達は食料と金儲けだ」
「げ、俺もかよ……」
「またコーヒー頼むなよ」
「何故バレたし」

メニューを睨み付けるハクア君は碧ちゃんへと目線を変える。そりゃそんなに真剣になって見てたら誰だって分かるよ。

「エルゼちゃんは?」
「寝てる」
「……平和だねぇ、おいらと代わってくれないかなぁ」
「ちっとは働け非戦闘要員」
「ちぇー」

よいしょ、とベッドから降りて軽く背伸びをする。エルゼちゃんはこのままで良いの?と碧ちゃんに聞けば「いざとなったら護身術がある」で片付けてしまった。まぁ、あるけど特に心配はしてないんだね。


宿の外でハクア君と碧ちゃんと別れて、おいらはしぶしぶ情報収集を始めた。まぁお金も少しあるし、アイスの一つや二つ買っても大丈夫だよねー♪





(妛)


あきゅろす。
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