17

「相手は丁度四匹だ。運良くこっちも四人……お前ら、分担出来るか」

碧ちゃんの指示が洞窟内に響く。でもちょっと待ってよ、確かに四人だよ、四人なんだけど……

「おいら非戦闘要員」
「んな言い訳がずっと続くと思ったか」

ハクア君にビシッと指摘される。あはは、今までがそうだったから続く事を期待してたんだけど。

「ソアは一匹から逃げていれば良い……俺のが終わったらそっちに行く」
「わぁ、碧ちゃん優しーい☆」
「調子乗るなあほソア」
「酷ぉーい」
「にゅー!魔物が襲ってきたよぉ!」

チィッと舌打ちした碧ちゃんとハクア君がそれぞれ一体ずつへと目掛けて走って行く。エルゼちゃんは誰よりも先に魔物を相手にしてたからか、魔物が少し弱っていた。
そして、おいらの目の前にはまだまだ元気なそいつが一匹。

「……君、胴体が弱点なんだっけ?」

聞けば、毛むくじゃらな魔物は唸るだけだった。ま、当たり前か。でもさっき上で見た戦いを見る限り、それは間違いなさそうだ。都合よくこいつだけ胴体が強い、なんて事もないはず。そんなおいらの前に立つ一匹が、近場に居たハクア君へとターゲットを変えた。
……あ、ヤバい。ハクア君に向かわれると後で絶対グチグチ言われるんだ、それはやだぁ。

「こらぁ、こっちを相手しなきゃ駄目だよーっ!」

とりあえずこっちに標的を向けさせる為に相手の顔面目掛けて石を投げた。命中したそれは地面へと落ちる。ギロリ、と目がこっちを向いた。これでこいつはおいらの敵って訳だ。
あくまでおいらは非戦闘要員なんだけど、護身術だってちゃんと身につけてる。何より避けるのは大得意。いざ襲われたとしても、相手の攻撃を全部避ければ全く問題ない。でもそれも面倒だからさくっと一匹やっつけようか。
邪魔なたいまつを地面に刺して、懐に用意してあったナイフを服の上からなぞる。……あまり使いたくないんだけど、仕方ない。

「えいっ」

投げるとそいつはしばらく立ち尽くしてから、バタンと音を立てて倒れた。あれ、えらくあっさり?

「やったぁ」
「早っ?!何したんだよお前!」
「ん、石を投げただぁけっ」
「嘘つけ!」
「うん、嘘。……どうも弱点に直撃しちゃったみたいだねぇ」

魔物に近付いて確認してみたところ、おいらのナイフは心臓部の少し下を捉えていた。

「うーん、もしかしておいらってばなかなかの腕前?」
「起き上がれ魔物、ソアの奴を食っちまえ」
「酷いなぁハクア君!でも、これなら本当に石でも行けそうかも」
「は?」
「えいっ」

下に落ちてある尖った石をハクア君が相手してる魔物に向かって投げた。グサリ、と刺さったそれは、おいらが相手した時と同じように倒れる。

「ほらねー」
「……お前、何者?」
「ソアだよぉ♪」

首を傾げながらおいらをじろじろ見るハクア君。それらを見ていたらしい碧ちゃんは村正君で弱点を突いて一匹を終わらせた。エルゼちゃんは正当法で仕留めたらしい、ぜーはーと大きく息を荒らしている。

「終わったか」
「エルゼ疲れたよぉ〜……」
「お疲れ、エルゼちゃん」
「……本当に一発で仕留めた、ねぇ」

ふにゃりと足を付いたエルゼちゃんの頭を撫でてると、ハクア君がやっぱり怪しげな表情でおいらを見ている。

「ハクア君、もしかしておいらの才能が欲しいとか?」
「何故そうなる」
「ソアは戦わないだけで実際はなかなか手際が良いからな」
「あれぇ、何で碧ちゃんがそれ知ってるの」
「そんな事を村正が言ってた」

俺も気付かなかったけどな、と碧ちゃんは小さく呟いた。ハクア君は頭を掻きながら「宝開けるぞ」と話を反らした。えへへ、と笑えば舌打ちが返ってきたのでそろそろ止めておこう。

「エルゼちゃん、立てる?」
「にゃ〜……ソアちゃんおぶってぇ」
「仕方ないなぁ〜、ハクア君おぶってぇ」
「だから何故そうなる」

だってハクア君が一番大きいもん、と言えば溜め息が返ってきた。

「エルゼはおぶる。ソアは歩け」
「え〜、何だか不公平っ」
「だってお前全然疲れてねぇだろ」

ま、確かにそうだけど。
地面に刺していたたいまつを引っこ抜いて、おいら達は宝箱へ向かって歩きだした。……まさか、また下に落ちるなんてそんな事はないよねぇ?





(妛)


あきゅろす。
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