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朝食を済ませた俺たちは、カーテン閉めきりの薄暗い部屋の真ん中で硬貨の詰まった袋を囲むように座り込んでいた。
「………で、こうして盗んだは良いが、これからどーすんの?」
「まずは使い道を決めたらどうかなぁ?何にどれくらい使うとか、さ」
「みゅっ!エルゼ、いっぱいお菓子買いたぁい!!」
「無駄遣いはダメだぞ、エルゼ」
「…ふみゅぅ〜……」
碧の言葉にしょぼんと獣の耳を垂れるエルゼ。ソアは小さく笑いながら「まずは〜…」と硬貨を床に広げはじめる。
「この中の六割がおいらのお小遣い♪」
「「いや、ちょっと待て」」
碧と見事に声が重なった。
俺らの声に心底不思議そうに目を丸くさせるソア。いやいや、何でそんな表情ができるんだよ!?
「どしたの二人とも。おいらが遠慮してるのがそんなに珍しいの?」
「遠慮!?人の苦労の結晶を六割もぶん取っておいてよくそんな事言えるな!」
「ソアちゃん、独り占めはダメ〜!!」
「あははっ、冗談だよ。おいらがそんな酷い事するワケないでしょぉ?」
…いやぁ、どうだろ…。
―――なんて、本当はキッパリと言ってやりたかったが、こっちを見るソアの笑顔がそれを封じる。
お前、こっち見んな。
「……にしても、袋の穴のせいで当初よりかなり金が減ったな……。予想外の痛手だぞ、これは…」
「ちょいと、ちょいと〜。何か今の台詞、俺のせいみたいに聞こえたんですけど」
「遠回しにそう言ったつもりなんだけどな」
「うっわ、ひでぇ。俺が悪者ですか」
「にゅ?ハクアちゃん、悪者なの?」
「んなワケないでしょーが」
「…まぁまぁ、袋に穴が空いてたのは事故だったんだから、そこまでにしようよ。ハクア君だって、落としちゃった分のお金は自分がキッチリ稼ぐって言ってるんだし!」
「おーい、いつ誰がそんな自虐的な事言ったよ」
「あれ、違うの?…おかしいなぁ、おいらにはハクア君の心の声がそう言ったように聞こえた気がしたんだけどねぇ」
「嘘つけ」
ソアの頭を軽く小突いて、床に散らばる硬貨を一枚摘まみ、指先で転がしながら遊んでいると、不意に碧が「そうだ、」と顔を上げた。
「……いっそ、もう一軒盗みに入るか?犯罪なんて一回やっちまえば何回やろうと同じだろ」
「エルゼ、もっかい鬼ごっこやりたい!」
「…冗談。俺は御免だぞ。警備員に追っかけられんのも、重たい袋担いで長距離走んのも……あとついでに女装も!」
「なんだよハクア。せっかく似合ってたんだから、もう一回ぐらいやれよ、女装」
ニヤニヤと怪しく笑う碧を「ふざけんな」と一蹴。あんな羞恥系の拷問、二度と御免だ。
「うーん……盗みに入るとしても、まずはこの街の情報を集めないとねぇ」
「どれぐらい掛かる?」
「えへへ、おいらを甘く見ちゃいけないよ。二日もあれば充分!」
「よし、なら早速頼んだ!………ソアが情報集めてる間、俺たちも各自仕事を探すか。金は貯めるに越した事はないからな」
「おーっ!エルゼ、お仕事頑張るよぉ!!」
「あーあ……また初めからカモ探し、か…。騙しやすそうな奴いんのかねぇ…」
……ふとその時、前の街にいたカモがちょいとだけ恋しく思えた。
(アオ様)
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