死神姫君と不実悪魔(女主)
1
色んな意味でシェラは気力を奪われていた。
なによりあんな恥辱の後で元気を取り戻せと言う方が無理な話である。
丸一日昏々と眠り続けたせいかもう窓の外は真っ暗で一目で夜だとわかった。
またセバスチャンが陵辱しにやってくる。
「っ、く……」
そう思うと涙が出た。
胸を貫くような痛みと身体を灼く屈辱がとがシェラを苦しめる。
こんなもの情けなくて嫌だというのに涙は溢れて止まらない。
鼻の奥がツンと熱くなり、苦しくて仕方がないのだ。
「ぅ、くっ……ひぅッ、ぇ……」
彼女は膝を抱えて肩を震わせる。
手の甲で涙を拭っても拭っても止まらないのだ。
ぼろぼろと溢れるそれはシェラの膝を濡らし、シーツに流れていく。
こんな陵辱もう嫌だ。
嫌で嫌で苦しくて苦しくて仕方がない。
もう耐えられそうになかった。
あの悪魔にすべてを奪われた。
彼女の尊厳もどうにか持ちこたえてきた自尊心も粉々に砕かれ蹂躙されてしまったのだ。
荒野に打ち捨てられた亡骸を貪る獣にも似た浅ましくも卑しい行いは生命活動の連鎖など無しにしてシェラを蝕む。
こんな、こんな、臓腑を煮えたぎらせる蛮行はもう沢山だ。
憎しみによる活力も既に枯れ果てた。
そのシェラに生への渇望は既にない。
もう、いい。
もう、こんなに苦しいのは嫌だ。
彼女はゆらりと立ち上がり、姿見の前に立つ。
青白い顔がそれに映って小さく笑った。
その鏡にシェラは強く拳を打ちつける。
彼女の顔が歪んで紅く色づいた。
砕け散った欠片がが彼女の足元に散らばり淡い光を映す。
その中でも大きなものを選んで手が傷つくことも構わず握り締めた。
真っ赤な血が腕を伝って幾筋も流れ落ちていく。
こんなもので死ねる身体ではないかもしれない。
だがそれならそれで死ぬまでやればいいのだ。
今のこの屈辱が終わるならそれでいい。
震える手を叱咤して彼女は鋭い破片をしっかりと握り締める。
その切っ先を首筋に押し当てた。
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