お願い、僕だけを見ていて



カイジは和也に与えられた部屋で、昨日からずっと和也を待っていた。
しかし、彼が帰ってきたのは明け方。


鍵のあく音がしたが、カイジは決して振り向かなかった。




「ただいま、カイジ」

「…お前昨日の夜なにしてた?」

「おかえりもなしかよ。
なにって…まぁ、色々だけど」




前置きなしに問われ、少し戸惑いながらも答える。

すると、カイジは肩越しに振り返り和也を睨み付けた。




「お前が女と寝たの知ってんだよ!」

「え?なんでカイジが知って…あ、やべ」

「ご丁寧に黒服共が教えてくれたんだよ…っ!
あいつら俺が嫌いだから、ざまあ見ろとでも思ってんだろ…」

「そいつ特定したらいちゃもん付けて殺しとくよ」

「…そんなことする前に、気の利いた言い訳でも考えたらどうなんだ?」




昨日の件について全く弁解しない和也に痺れを切らす。
すると、浮気をした張本人は困ったように笑いながらカイジに近付く。




「言い訳なんかしないって。ホントに悪いとは思ってるし」

「意味わかんねぇよ…!じゃあ初めっからすんな!」

「ごめん、愛してるのはカイジだけだから」




和也はそう言って、後ろからカイジを抱き締める。



カイジはわかっていた。
きっとまたやる、と。


和也が自分を愛しているというのは、自惚れだと言われそうだが信じていた。
他の人たちに接している時より、態度も言動も幾分かマシだから…しかし、問題なのはそこではなかった。



もっと根本的な…習慣、慣れ、といったもの。
そう、こんなことは一度や二度ではなかった。



自分の境遇のせいで(多少は性格も関係していただろうが)誰からも愛されず金ばかり腐る程あった和也は、女を買うことも、金に目が眩んだ女を相手することも普通のことだった。

ずっとそんな生活を続けていたからか、罪悪感というものをなかなか感じられないのだ。




だからカイジは言えない。
お前みたいな奴は最低だ、なんてことは。




「…もう絶対すんなよっ…!バカ…!」



言えない、離れられない、どうしたらいいのかもわからない。


終着点など見えぬまま、この可笑しな関係を続けていくことしかカイジには出来なかった。



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女遊びに慣れ過ぎちゃった和也。
好きになったら一直線な和也も好きだけど、たまにはこんな坊カイも書いてみる。



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