まぶたにキス
ロックオン=ニール
「ロックオン、」
待ち合わせの時間になっても一向に現れないロックオンに、痺れを切らしたアレルヤは、彼の部屋の前まで来ていた。
何度かドアの前で名前を呼んでみたが、一向に返事がない。
いい加減我慢ならずに彼の部屋のパスワードを入力する。その行為は、彼らの間柄がただならぬものということを示していた。
「ロックオン、入るよ?」
開いたドアから顔を覗かせる。
しかし、見回しても彼の姿を認識する事は出来ない。その代わり、不自然に膨らむ大きめのブランケットが一枚。
その物体を見てアレルヤは、呆れたような、安心したような、何とも言えない溜息をついた。
「ロックオン」
彼の名を小さく囁き、物体に近付き傍に腰をおろす。そして、その中身を覗き込んだ。
―居た―
其処には小さく(まるで猫みたいに)丸まってブランケットに包まっているロックオンの姿があった。アレルヤの気配にも気付かずに、ぐっすりと寝ている。
アレルヤは引き込まれるように、ゆっくりとロックオンの頭に手を伸ばし、そっと頭を撫でた。
「…ここ最近忙しかったからね」
連日の武力介入、度重なるミッション。クルー達の疲労は目に見えていた。ロックオンも例外ではない。
アレルヤは撫でる手を止め、ロックオンの今は隠された瞳を見つめた。
明日、明後日、それ以上
僕はこの瞳を見ることが出来るのだろうか
この瞳に僕が映ることはあるのだろうか
辛い運命なのは解っている
僕らに未来はない
来るべき罰を受けなければならない
けれど、だけど…
「……おやすみなさい」
零れかけた涙をこらえた。そして、深く閉じた瞳にアレルヤは柔らかく深い愛を落とした。
まぶたにキス
(願わずにはいられない)
(貴方の幸せを)
(せめてこの時が)
(貴方にとって)
(安らかでありますように)
thank you 睦言
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