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君の名を

*3話アレルヤ奪還後、突発ss
ロックオン=ライル



「ロックオン、コーヒー飲みますか?」

偶々2人で食堂に居ると、アレルヤがロックオンに淹れたてのコーヒーを差し出した。
にこりと笑うアレルヤにつられてロックオンも笑顔になる。


「サンキュ」

コーヒーを手に取ると、2人とも静かにそれを飲み始める。


最初にその静けさを打ち破ったのはロックオンのほうだった。


「…アレルヤって順応性が高いんだな」


ロックオンが呟いた。アレルヤはそんなロックオンを訝しげに見つめる。
なんの脈絡もなく言われ、何の事を指して彼が言っているのか理解が追い付かない。

「えっと、ありがとうございます」

とりあえず、お礼を言ってみる。
するとロックオンはニコっと笑い、口にコーヒーを運んだ。

「もっと、何かあるかと思ってたんだがなぁ」

ロックオンは心底残念そうに顔を歪めた。
彼の言わんとしている事が飲み込めず、アレルヤは眉を下げる。
そんなアレルヤの様子を見たロックオンは、ちゃらけた笑顔を浮かべ「大した事じゃないさ」と笑った。

「ただ、もっと俺をロックオンって呼ぶ事に抵抗感と感じるのかと思ってたんだがな」

「アレルヤは兄さんの恋人だったんだろ?」言葉には出さないにしろ、ロックオンの目はそう語っていた。
先ほどの軽い表情は其処にはない。

「……」

「他のクルー達は少なからず俺の事を《ロックオン》って呼ぶ事を戸惑っている」

もう温くなったコーヒーを再び口に含んだ。

「君は何でそんな簡単に俺を《ロックオン》って呼べるの?」

二人の間に長い沈黙が流れる。
ロックオンのコーヒーは既に空になって、容器としての役割を機能させていなかった。







「僕は」


アレルヤがおもむろに口を開いた。その音に思わず、身体が反応する。







「僕はロックオン、あなたのお兄さんを愛していました。それは今でも変わりません。多分これからも」







「確かに、あなたをロックオンと呼ぶのは少し胸が苦しくなるときもあります。彼の死を目の前に突きつけられているかのようで」







「けれど、今のロックオンはあなたです。なのに、あなたをロックオンと呼ばないのは失礼でしょう?」







「ただ単に、僕の愛した《ロックオン》とロックオンは違うだけのことです。」







一息してアレルヤは、優しげな、それでも強さのある瞳をロックオンに向けた。







「だから名前を呼ぶことに躊躇する必要はない。あの人はあの人で、あなたはあなた、だから」








そう言うと、アレルヤはにっこりと笑って、空になったロックオンのカップを取り、温かいコーヒーを注いだ。




「なるほど…ね」

「何かまだ不満ですか?」

「いや、不満というか」

言葉の濁しつつ、ロックオンは再び役割を得た容器を手にした。






君の

(兄さん)
(お前なんてやつを残して逝っちまったんだよ)









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