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俺の姉を紹介します


俺は名前が好きだ、愛している。名前が俺以外の男と話していたり、その男の話をするだけで嫌な気持ちになる。名前の行動全てが俺に関わっていないと満足しないという歪んだ気持ちを持っている。こんな性格はいやだ、治したい。でも止まらない。

だから俺は決めた。
名前のことを不純な目で見てしまうのはもう仕方ない。とにかくそれを名前にバレないようにする。一人の女として好きだ、なんて一生言わない。
だって名前は俺の姉ちゃんだから。弟の俺と結ばれるなんてことは有り得ないのだから。



「ハチー朝ですよー」

「ん〜…」



俺を起こしに名前がやってきた。いつもは母ちゃんが起こしに来るのに…姉ちゃんが…今日俺が一番最初に視界にいれたのが名前…へへ、なんか嬉しいな。名前はシャッとカーテンを開けた。俺はニヤけた顔がバレないように布団にもぐった。



「寝るな!」

「…あと五分…」



俺がまだ眠いと思ってるんだな名前は。まあ確かに眠いし、こうやって名前に揺らされてるのも悪くないし、もう少し粘ってみっかな。



「本当に五分でいいの?そんな眠そうな顔して五分で満足するの?わかった、五分したら絶対起きるんだよ、いいね?」

「ん〜……」

「わかってないでしょハチ!五分で満足しないならさっさと起きなさい!」



満足ねえ…俺は名前が目覚めのキスとか言ってちゅーでもしてくれりゃ、バッチリ目が覚めるんだけどなー。まあそんなことは口が裂けても言えないので、黙っていた



「おっ起きないならベッドの下に隠してるエロ本を一冊ずつ水に濡らしてシワシワにするよ!」

「今起きた!!」



なッなんでベッドの下にエロ本あること知ってんだ!?調べたのか!?姉モノのエロDVDとか全部バレてんのか!?男だから仕方ないと思ってんのか!?おい名前…答えろよ…!!



「はいおはよう、ご飯は出来てるから顔洗ってきなさい」

「出来てるって…あれ?そういえば母さんは?」

「聞いてなかったの?昨日からお父さんと一緒に海外へ出張って言ってたじゃん」



ああそうか、そういえば…。聞かされた時はあまり考えてなかったけど、それって俺と名前がふたりきり…って…ことかよ…!?朝ごはんできてるって、その朝ごはんはもしかして名前の手料理だったりするのか!?

身支度を済ませリビングに向かうと、テーブルには…味噌汁と…ご飯と…魚…がッ!調理風景を想像しながら食べる。名前はエプロンをしていただろうか、髪の毛をしばっていただろうか、包丁で手をきって「いったーぁい」とかしたのだろうか…!?



「じゃあ私は先に学校行くから」

「なんで?なんか用事あんのか?」

「委員会の仕事があるからさ。それじゃあいってきます!」



おう、行ってらっしゃいと名前を見送る。生徒会か…。あそこ女子名前一人で男ばっかなんだよなぁ、うちの学校、元々女子少ねぇし…。はー、やっぱ名前が受験するって時、こっから近い女子高を勧めとくんだった…あそこは制服可愛いし…きっと名前にも似合…

っけね、早くしないと遅刻だ。



「あ、八左ヱ門。おはよー」

「おはよう」



通学路の途中で兵助と勘右衛門に会った。ふたりで一緒に登校してんのか、仲良いな。俺も名前とこんな風にラブラブ登校したいもんだ…はぁ



「はよ」

「…おい、今私達を見てため息をつかなかったか?」

「気のせいだろ…」

「また「名前さん」のことでなんかあったんじゃないの?」

「名前さん?ああ、八左ヱ門の好きな人のことか」



名前のことは、そういうことにしてある。流石に実の姉が好きです、と友達には言えないからな…。同じ学校だからバレる可能性があるけど、たまたま姉と同じ名前の人、で済ませられると思うし。



「で、なんかあったの?」

「名前さんが朝、俺のこと起こしにきたんだよ…」

「なんだそれ!?まさかとは思いますがその「名前さん」は八左ヱ門の想像上の人物ではないでしょうか?」

「失礼だな!実在するって!!なんで敬語なんだよ!?」

「写真とかないの?携帯とか」

「あるけど見せたくない」

「独占欲強いなお前……」



何を隠そう俺の携帯のロックフォルダの中には、名前の写真がたくさんある。名前は「もー勝手に撮らないでよ」となぜか嬉しそうに怒る。撮影自体はOKらしい。夜、俺が、それを見ながら、なにをしているか知らないで…

学校に到着し、ふたりと別れ自分の教室へ向かう。雷蔵と三郎が挨拶してきた。俺も挨拶し返して、先生が来るまで雑談をしていた。

…そういえば家に帰ったら名前と二人きりなんだよな
これからしばらく二人きりなんだよな…
朝も…二人きりだったし…二人だけ…二人だけ…



「うわっ…八左ヱ門」

「なんだよ?」

「鼻血が出てるぞ…一体何に興奮したって言うんだ」

「何に、か…はは…」

「笑ってないでほら!これで拭いて!」

「雷蔵、さんきゅーな」

「鼻血たれてる顔でお礼言われてもあんま嬉しくないから!」



先生が来るとふたりは自分の席に戻っていった。

はー

父さん母さん、名前はしっかりしててあまり我侭を言わないけど、ふたりが出張と聞いた時寂しいと思ったに違いない。…でも弟の俺は両親の不在を喜ぶ悪いやつだ。鼻血が出るくらい。


授業が終わり、さっさと家に帰ってから気付いた。そうだ、父さんも母さんもいないんだからメシとか自分たちでやんなきゃなんだ!どうすっかな〜今からコンビニ行くか…制服を着替え、準備していると名前から電話がかかってきた。



「もしもし」

「もしもしハチ!?」

「どっどうしたんだよ姉ちゃん」

「今日なにが食べたい?」



…コンビニに行こうとか思ってた自分がなんか恥ずかしいなぁ…名前が晩飯つくってくれんのか…う〜ん、なにがいいかな。俺はお前を食べたいんだけど!といいたくなったがぐっと堪えて、自分の好物を思い浮かべる。そうだ!



「じゃあ姉ちゃんのオムライス食いたい」



俺達ふたりの生活はまだ始まったばかりなんだ…好物全部つくってもらうことだって出来るじゃないか…焦らない焦らない…。

名前は思ったより早く帰って来た。ただいまーとニコニコしている名前は最高に可愛いな…抱きしめたいな…。名前は早速台所へと向かっていった。いつもは母さんが使っているエプロンを名前がつけてる。キュッと紐を後ろ手で締める姿になんだかドキッとした。そ、そんな場合じゃない。俺も手伝わねーと!



「大丈夫だよ、ハチは座ってテレビでも見てて」



お前は聖母か何かか!!高校生にしてなんだその包容力溢れる笑顔は!!これからしばらく俺達ふたりだけなんだから、協力し合ってやっていこう。なんでも一人でやろうとすんな。そう言うと姉ちゃんは「は、はい…」と頷いた。なんか顔赤いのは気のせいか?それとも熱でもあんのか?心配だな…

しばらくして、オムライスが完成した。なんだか幸せな気分になった。俺がかき混ぜて焼いた卵が…名前の炒めたご飯を包んでいる…言わば二人の共同作業の末に生まれたのがこのオムライス…名前とふたりでオムライスやスプーンをテーブルに運ぶ。なぜか名前がボーッとしていたので声をかけると慌てた様子で冷蔵庫へ向かっていった。


テーブルの上のオムライスを見て思った。ハ、ハートマークとか書いてみるかな…ただ普通にケチャップかけるだけじゃつまんねえしな!名前には「ちょっとふざけて書いてみた」くらいでいいんだ!そうだ!

ケチャップでオムライスにハートマークをかいて、なんだかむず痒くなった。かいたはいいけどどうすんだ俺…名前に「うわキモッ」とか言われたら…そこまで考えてなかった。お茶とコップを二人分持って戻ってきた名前は、オムライスを見るなり固まった。や、やっぱりキモかったか!?



「ちょ、ちょっとふざけて書いてみた…へへ」

「…は、はは、上手に書けたなぁハチ!」



なんか名前の反応が微妙だ!!するんじゃなかった!!後悔しても遅い…名前のオムライスを味わうことにしよう。いただきますと言って一口食べてみると、思ったより美味かった。つーかすげー美味い。姉ちゃんってこんなに料理出来るやつだったっけ?



「姉ちゃんって何気に料理できるよなぁ」

「まーね」

「オムライスすっげー美味しい」

「…そりゃよかった」



そう言って笑う姉にドキッとした。
こんな美味しいものをつくれるんだから、名前自身はもっと美味しいんだろうなぁと食事中にいやらしい妄想をしてしまった。俺の大好きな姉よ、弟はいやらしい目で名前を見ているし、脳内で何回も名前を犯している。名前の行動ひとつひとつに興奮するダメ野郎だけど、どうかこれからも側にいて欲しい。絶対にこの気持ちを名前に告げたりしないから、どうか、どうか少しでも長い時間、名前が俺だけのものでありますように。

 



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