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私の弟を紹介します


 
私はハチが好きだ!愛している!
ハチが他の女と一緒にいるとむかつくし他の女の話をするとむかつくし他の女を見ているとむかついてしまう。ハチの行動全てが私に関わっていないと満足しない歪んだ女なんです!!自分でもイヤだよこんな性格!!なおしたい!

だから私は決めた。
ハチのことは純粋に弟として愛しているのだと。決して一人の男として見ていないのだと。自己暗示をかけてそれが事実なのだと自然に思えるように。

だって私はお姉ちゃんだから、ハチと結ばれるなんてことは有り得ないのだから。



「ハチー朝ですよー」

「ん〜…」



朝、まだ眠っているハチを起こしに行く。カーテンを開けると日の光が入ってきて、その眩しさから逃げるようにハチは布団にもぐっていった。



「寝るな!」

「あと五分…」

「本当に五分でいいの?そんな眠そうな顔して五分で満足するの?わかった、五分したら絶対起きるんだよ、いいね?」

「ん〜……」

「わかってないでしょハチ!五分で満足しないならさっさと起きなさい!」



あーもう、腹出して寝やがって…確かに昨日は暑かったけど、布団蹴っ飛ばして寝てたら風邪ひくだろ…まあそしたら私がつきっきりで看病しますけどね!…ハチ起きねーな…どうしよう、ここは目覚めのキッスとかしてもいいところ…?

いやだめだ!私はお姉ちゃんなんだからそんなことしちゃ!



「おっ起きないならベッドの下に隠してるエロ本を一冊ずつ水に濡らしてシワシワにするよ!」

「今起きた!!」

「はいおはよう、ご飯は出来てるから顔洗ってきなさい」

「出来てるって…あれ?そういえば母さんは?」

「聞いてなかったの?昨日からお父さんと一緒に海外へ出張って言ってたじゃん」



そう、いつもならハチを起こすのはお母さんの仕事なのだが、そのお母さんはお父さんと共に仕事の関係で海外へビューン!しかもかなり長期に渡ってビューン!しばらくの間、この家は私とハチの愛の巣に…じゃない、私とハチ、姉弟のふたりきりなのである。夢のようなシチュエーションだ。ていうか実際何度も夢に見たシチュエーションなので、実はこれは夢なのではないかと思った。ま〜でもなんだかんだで現実なんで!口元緩んじゃったりするんですよ!



「じゃあ私は先に学校行くから」

「なんで?なんか用事あんのか?」

「委員会の仕事があるからさ。それじゃあ行ってきます!」

「おう、行ってらっしゃい」



そ、そんな可愛い笑顔で行ってらっしゃいとか言って手を振るなーっ!

私だって本当はハチと一緒に登校したい
ハチが朝ごはんを食べる姿をじっくりと観察したい
着替えを手伝いたい!

でもそんなことしたら姉に戻れなくなる…弟としてハチを見ることが出来なくなる…だから委員会を理由にしていつも家を早く出るのです。朝の委員会は自由参加だと言うことをハチに黙って!



「おはよー、相変わらず潮江は早いねぇ」

「名前もな」



同じ生徒会、会長の潮江文次郎。誰よりも熱心に委員会活動に励み、誰よりも早く登校し、誰よりも多くの作業をこなす。私はそんな潮江を尊敬している。



「文次郎はいるか」

「あれ、立花」



立花がやってきた。潮江と同じく委員会の委員長だ。ははん、さてはうちの委員会の予算をあげろ!とか言いにきたな?うちの学校は部活より委員会活動に熱心な生徒が多いからなぁ、ハハ



「うちの委員会の予算をあげろ」

「はいドンピシャ」

「なにがドンピシャなんだ名前。」

「立花がここに来るのは大抵それだからね」

「却下する、作業の邪魔だからさっさと出て行け」

「そしてそれを潮江がバッサリ切るのもね」

「どうしてもダメか」

「ダメだ」

「どうしてもか」

「名前、仙蔵にお前の弟の可愛さ話してやれ」

「…!文次郎、貴様」

「わかったよ!立花、聞いて今日ハチがね!!」

「ええいそれは後で聞いてやるから今は黙れ!!」

「子供みてぇに腹出して寝てんのよ!涎たらしてさ!普段は見えない逞しい腹筋に朝から大興奮だったんだけどね!」

「わかったから今は…」

「中々起きないからエロ本水に濡らすっつったらガバッて起きてね!そんなにエロ本大事かよみたいな!私が先に濡れちゃうわ、みたいな!」

「くそこのブラコンが!どけ!邪魔だ!」

「今日から両親仕事でいないからハチとふたりきりなんだけど考えただけで昇天ものだよ〜どーしよお〜!今朝だってハチ、私の朝ごはんを食べるんだよ?私が愛情をこめて調理したご飯をさあ!」

「フッ…いくら仙蔵でもうちの名前には適わないだろう…」

「つ、次は後輩たちを連れて確実に予算を狙いに来るからな!」

「えぇっ立花もう行っちゃうの!?まだ話したりないよー!待ってよー!」

「名前、予算の計算に戻れ」

「…はーい…」



ハチの可愛さを話してやれって言うから話したら立花は出て行ってしまった。まだまだ語りたいのに潮江は作業に戻れとか言うし。ため息をついた後、椅子に座りシャーペンを握る。さっきは興奮していたので思わず立ち上がってました。

ベラベラとハチのことを喋った後に言うのもなんだけど、誰かれ構わずハチの話をしているわけじゃない。私だって最初は「姉が自分の弟を可愛い可愛い言うのは不審」って思ってたんだけど、それは私にやましい気持ちがあるからであって一般の人が聞けば「ブラコン」の一言で済むことをふたりから教わった。

なら少しくらいハチ可愛い可愛いって話しても大丈夫だよね!と言うことで、ふたりには自分でも異常だと自覚しているこの気持ちをぶっちゃけている。私はハチが好きだ!愛してる!!と言う気持ちを。



「今日からだったか、両親仕事でいなくなるの」

「そうだよ」

「家事とか大変だろ」

「いや〜?料理はハチの生きる糧になると思うと苦じゃないし、洗濯はハチの身を包んでいた衣服を干せると思うとむしろ嬉しいし、掃除はハチが健やかな環境で過ごす為ならと思うと幸せだし」

「……」

「そんなわけで今日の委員会、早上がりしてもいいかな」

「その分しっかり朝働け」

「朝の委員会は自由参加じゃん」

「名前は強制参加にする」

「ひどっ」



少しすると田村君や中等部の加藤くん、任暁くんがやってきた。神崎君は迷子かな、相変わらずだなぁ。ホームルーム五分前のチャイムが鳴ると、みんな荷物をまとめてそれぞれの教室へと向かっていった。


家に帰ったらハチとふたりきりなのよね

これからしばらくふたりきりなのよね

ふたりきり…ふたりきり…



「名前」

「なに?」

「鼻血が出てるぞ」

「ひっ恥ずかしい!違うよ!?ハチとふたりきりだと思って興奮したとかじゃ」

「ティッシュをくれてやる、そら」

「いでっ箱ごとは嬉しいけど端の尖がったとこ痛いよ!」



はぁあああ…

ハチはイイコだから、両親が仕事でいなくなると知った時はしゅんとしていた。
一方わたしは聞いた時は冷静を保っていたが、自室に入った瞬間布団にダイブして足バタバタして喜んでしまった。ごめんなさいお母さんお父さん…弟と違って娘は…姉は両親の不在を喜ぶ悪いやつです!でも仕方ないじゃないですか、あなたたちがこんなにも可愛い弟を生んでしまったのですから!!


授業が終わり、委員会も途中で抜けて、スーパーへ晩御飯の買い物にきた。あっそーだ!ハチに今日なに食べたいか聞いてみよっと!鞄から携帯を出し、発信履歴からハチの携帯へコール!



「もしもし」

「もしもしハチ!?」

「どっどうしたんだよ姉ちゃん」

「今日なにが食べたい?」

「え!え〜っと…」

「なんでもつくるよ!」

「じゃあ姉ちゃんのオムライス食いたい」




私には見えた、電話越しに私のオムライスが食べたいと言うハチの笑顔が…可愛い…私の大好きな笑顔が…

姉ちゃんつくりますよオムライス
だってハチが私のオムライス食べたいって言ったから
オムライス食べたいじゃなくて
姉ちゃんのオムライス
私のオムライスが食べたいってオムライスオムオムオムアアアアア

買い物を済ませ高速で家に帰るとハチがいて、おかえりと言って私に笑顔を見せた。ほんと…可愛いなお前は…。ただいまと言った後、鞄を置きお母さんが使っているエプロンをつけ、手を洗い、調理に取り掛かることにした。



「姉ちゃん」

「ん?どうしたの」

「俺も手伝うよ」

「大丈夫だよ、ハチは座ってテレビでも見てて」

「姉ちゃん!」

「なっなに」

「これからしばらく俺達ふたりだけなんだから、協力し合ってやってかないとダメだろ」

「は、はい…」

「なんでもかんでも自分一人でやろうとすんなよ、な?」



ハチは全くわかっていない。自分の言葉が姉を苦しいくらいにときめかせる凶器なのだと言うことを。なんてイイ弟なんだ?おかしいだろコレはさ、ねえ?私に男のアレがあったらボッキボッキに違いないぞ!!

じゃあちょっと手伝ってもらおうかなと言って、ハチに卵かきまぜてもらった。あと後片付けもお願いした。家事をするハチ…はぁあ、キュンとしますね…

オムライスが完成したのでテーブルに運ぶ。ケチャップを冷蔵庫から取り出したときにハッとした。ハ、ハチのオムライスに…ハートマークとか…かいてもいいだろうか…



「姉ちゃんなにボケッとしてんだ?」

「なっなんでもねーっすよ!!」

「?」



な、なに考えてんの私。そうだお茶!冷蔵庫からお茶も取ってこないと!テーブルにケチャップを置いた後、もう一度冷蔵庫を開く。冷えたお茶を取り出し、コップをふたつ持ちテーブルに戻ると、ハチがオムライスにケチャップでなにか書いてた。

こ、こいつケチャップでハートマーク書いてる…!!!!



「…へへ」



気付いた私にいたずらに笑って見せた。私の脳内がカーニバルとかもうそういう次元じゃなかった。とにかく落ち着いて冷静になるのに精一杯。

弟は知らない、姉が自分にこんなにも歪な情欲を抱いていると言うことを。



「姉ちゃんって何気に料理できるよなぁ」

「まーね」

「オムライスすっげー美味しい」

「…そりゃよかった」



今だってお前の顔についたケチャップを舐めとってやりたいと思ってる。ハチの方が美味しいんだろうなぁと食事中にいやらしい妄想をしている。

私の大好きな弟よ、姉はいやらしい目でお前を見ているし、脳内で何回もお前を犯しているし犯されているし、お前の行動ひとつひとつに興奮するダメ女だけど、どうかこれからも側にいて欲しい。絶対にこの気持ちをお前に告げたりしないから、どうか、どうか少しでも長い時間、八左ヱ門が私だけのものでありますように。






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