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弟が、好きです
 

高校を卒業したらどうしようかな
お母さんとお父さんは学費のことは気にするな、望むなら一人暮らしだってさせてやるって言ってた…その言葉に甘えて、卒業したら県外の遠い大学へ行ってハチから離れるのもイイかもしれない。私が家にいなければ彼女ができた時連れ込みやすいだろうなあ。うちの親は家を空けることが多いし。今後こうやって「ハチから離れる」なんて考えできなくなる前に…

と、思っていた時期が私にもありました!今週に提出の進路調査票を見ながら思い出す
立花と潮江は同じ大学に行くらしい。それはふたりが決めたんじゃなくて偶然希望する大学がかぶっただけらしいのだがキミたちちょっと無自覚に仲良しで気持ち悪いぞ。微笑ましいけど。そうだ、立花には一応お礼を言っておこう


「立花」

「なんだ」

「ありがとね」

「…」


無言でハァ?という顔をされたがいいんだ!言いたかっただけだから!あと潮江には唐突にごめんと言っておいた。こいつもハァ?って顔をした。それはすごく立花に似ていてやっぱお前ら仲良しだなと言ったら今度はハァ…?と呆れ混じりに言われた。いいんだよ言いたかっただけだから!はは!

授業が終わり委員会も途中で上がり、早く帰ってハチに会いたいと下駄箱へ急ぐとそこには座りながら携帯をいじっているハチの姿。私が委員会終わるまで待ってたらしい。え!?


「名前と一緒に帰りたいなって思って」

「あ、あぇ、そ、そっすか!」

「嫌だった?」

「嫌なわけないだろ…」


な、なんだお前…リアルハチ公か!?好きだよ!周りに誰もいないことを確認してから抱きついた。ハチは笑って頭を撫でてきた。思えば一緒に下校なんて小学生の頃以来だった。それも低学年までだったし。


今日の買い物は思い切ってスーパーじゃなく駅前のデパートにしよう!と提案するとハチは一瞬顔をゆがめた。その後すぐにああと笑った。…?不思議に思ったけどあまり気にしないでデパートへ向かった。晩御飯の材料を買ったあと参考書を買いたかったので本屋に向かう。見えてきたところでハチが「やっぱり本屋は今度にしないか?」と聞いてきた。なんでなのかわからなくて頭の上にハテナを浮かべているとうちの学校の制服を着た男子四人が笑顔で近づいてきた。どうやらこの四人はハチのお友達らしい。わたし本見てるねと言ってその場を離れた。参考書のコーナーを見ていたら後ろから肩をたたかれる。振り向くとハチのお友達ふたりがいた


「ああ、君達は…」

「八左ヱ門の友達の尾浜勘右衛門です」

「久々知兵助です」

「ハチとは同じクラスなの?」

「いえ、私達はA組です」


あ〜言われてみればこのふたりはA組って感じだな。
何年生なんですか?と聞かれたので三年生と答えるとじゃあ先輩ですね、八左ヱ門とは付き合ってるんですか?と尾浜くんがニコニコしながら聞いてきた……なんて答えようかな!?このふたりは私がハチの姉だと知らないようだし、イエスアイドゥ!と答えてもいいんじゃないか?


「そ、そうだよ!」

「へぇ、やっと?」


尾浜くんが意味深なことを言った。やっとってなんだい!?でも聞いてしまうのもなんだか怖いような…
あ、そういえばわたし名乗ってない。でもこのタイミングで竹谷名前ですとは言えない…偽名を使うか!?すぐバレそうだからやめよう。私が色々考えていると兵助、勘右衛門とふたりを呼ぶ声が聞こえた。尾浜君がはーいと言ったあとじゃあまたと言って声のした方へ駆けて行った


「じゃあ私も」

「あ、うん…またね」

「はい、またお話しましょうね、お姉さん」

「えっ」


お姉さん…って…わたしのことだよな?どういうこと?ここで先輩と呼べばいいのにあえてお姉さんって何だ?年上の女性をお姉さんって呼ぶのは全然変なことじゃないけどなんで唐突にお姉さん?へぇ、やっとってなに?おい…おまえらまさか…ハチがはぁとため息をつきながらこちらへ向かってくる。さきほどのお友達の姿はない


「はぁ、あいつらやっと行ったよ…名前、なんか変なこと言われてねーか?大丈夫?」

「…い、言われてないよ」


あ〜〜やらかした!だってふたりが私のこと知らないフリして学年とか聞いてくるから!馬鹿か私は!でもそれで「へぇ、やっと」ってなに…?気になるけどこのことをハチに言うわけにはいかない、なんとかして久々知君と尾浜君に話を聞く必要があるな!

もしかしてハチが駅前デパートという言葉をきいて顔をゆがめたのは友達がいるかもしれないからだったのかな。今は私のほうが顔をゆがめているよ。はは!
デパートを出て後はゆっくり歩いて帰るだけ。夕日が眩しいなぁなんて思いながら両手で買い物袋をぶらさげていると、ハチが貸せよと言って持ってくれた。私が両手で持ってたのをハチは片手で…男の子だな!気付けば車道側を歩いているし、ちょっとときめいちゃうな…。

フリーだった右手がぎゅっと掴まれる感じがしたかと思ったらハチが握っていたので指を絡めた。やばいな…爆発しちゃうかもしれない。愛しさでくらくらする!


「手、繋ぐの久しぶりだね」

「小学生以来だな多分」

「一緒に帰るのもそうだよ」

「…なんか昔に戻ったみたいだな」

「昔の方が仲良かったんだね」

「まあ子供だったしな」


私達は血が繋がった姉と弟だから結婚もできないし子供だって出来ない
今まで世話をしてくれた親に孫の顔を拝ませることだって出来ない
多くを望めない関係であり多くを犠牲にする関係
お互いが好きで一緒にいられるだけで幸せだと感じていられる今だけ
今だけは何も考えずにただ手を握り合っていても許される
例えこの先わたしやハチに何があっても、この手の温度は絶対に忘れない。


「ハチ手汗かいてる」

「うるせー!」


八左ヱ門、どうしようもなく、お前が好きだよ。



あきゅろす。
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