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弟のせいで大爆発


もう放課後か…帰り支度をしながら昨日のことを思い出す。ハチまで変態だったなんて予想外すぎて頭ん中パンクしそう。姉である私に顔面踏めとか一枚ずつ脱げとかもう完璧にあの子変態ですよ!



「いや違うだろ」

「た、立花!?お前ついに人の思考を読み取る能力を身に付けたのか!?」

「お前がボソボソと口に出していたんだよ」

「私は気付かぬ内に自分の考えていることを口に出してしまう能力を身に付けたのか…」

「能力とは言わないだろうそんなこと。それより弟が変態とはどういうことなんだ」



今まで私は立花にハチの可愛さを話すだけだった。立花はそれを適当に聞き流しているのだと、そう思っていた。こうやってハチについて聞いてくるということは、私の話に多少は興味を持っていてくれていたということか…なんか嬉しくなった。昨日の出来事を立花に話した



「それは…本物だな…」

「うん、吃驚したよ」

「…?意外と普通だな、名前」

「ん?そりゃ…」

「弟に告白されたようなものじゃないか」

「……こッ」



告白ぅ!?と大きい声で言いそうになったがそれを堪えた。え!?そういう考えをするべきだったの!?変態ってことカミングアウトされただけで告白!?い…意味がわかんねーよオイ!それに…



「それにハチは潮江が…」

「文次郎がなんだ?」

「ハチは潮江がすきなんだよ…」



忘れもしないハチのあの言葉「好きになってはいけない人を好きになってしまった」「その人は私と同じ学年で生徒会」



「つまり潮江だろ!?好きになってはいけない人っていうのは、自分と同じ男を好きになったってことなんだよ!」

「まあ…そういう勘違いをしてしまうのも無理ないな」

「勘違い!?」

「よく考えてみろ。男が好きなら、どうしてお前に踏まれたがるんだ」

「それは…ハチが変態だから…」

「…それで納得してしまえばそれで終わりだが…こういう考え方も出来るだろう。好きになってはいけない人と言うのは血の繋がりがある姉のお前」

「!」

「名前が好きなら、お前と同じ学年で生徒会と言ったことに合点がいく」



いやいやいや?そんなのは自分にとって都合のいい考え方をした場合であって、ハチが私のことを好きなんて有り得ないだろう。ハチは変態だから「実の姉」である私に踏まれたりすることに興奮するってだけなんだよ。ていうかむしろ「異性」ってだけで興奮しているんだよ。いやハチは潮江が好きだから、もう目に映るもの全てに興奮するんだよ、きっとそうだ!

全く、ほんとしょうもない変態だよね!

でもそんな変態のハチも、その内彼女か彼氏つくって、家に連れてきたり家に遊びに行ったりするようになるんだ。私以外の人と幸せを見つけて、私以外の人と過ごすようになる。当たり前のことだし今までだって何回もそう考えたことがあったのに、なぜだか今日は胸が苦しくて仕方なかった。

苦しみながら家に帰った。ハチはまだ帰ってないみたいだ。私は父と母の部屋に入りアルバムを探した。幼い頃の写真が見たくなったからだ。私が五歳、ハチが四歳の時の写真が見つかった。ハチが美味しそうにソフトクリームを食べている写真だった。口の周りにべっとりアイスつけて、私がそれを拭いている写真だった。この頃はちゃんとお姉ちゃんできていたのに、どうして私は…


あーーーーもうちくしょー!ハチのことが好きすぎて諦めらんねーよ!なんでアイツ私が変態だってことにドン引きしないんだよ!姉が変態なんだぞ!自分の体操着着てハァアってしてたんだぞ!普通気持ち悪いって言うだろ!拒絶するだろ!なんで…なんで自分まで変態とかカミングアウトするの…!?私はこの時すこし頭がおかしくなっていた。全ては立花仙蔵のせいである。部屋を出て、次に向かったのはハチの部屋。ホラーを見て一緒に寝たあの日、本当はハチの布団でハチの匂いに包まれて眠りたかったんだ。それを思い出して、ハチの布団にダイブした。はぁ、ハチの匂いだ。枕に顔を埋め匂いを吸い込む。はぁ〜ハチの匂いだ!



「ただいまー…あれ?姉ちゃーん?」



玄関からハチの声!ちょっと眠たくなってきていた私の目がカッと開いた。どっか、どっかに隠れなくちゃ!そうだベッドの下に!急いで隠れる。少しして部屋の扉が開いた。ベッドの下からはハチの足だけしか見えなかった



「寝てんのかなぁ…」



私のことかな?だったら起きてるよ!君のベッドの下で!…ハチのベッドの下は埃と雑誌がいっぱいだった…雑誌は暗くてどういうものなのかわからないけど、きっとアーンでアアーンなものなんだろうと思ってニヤッとした。ふふ、とハチのなんかやらしい笑いが聞こえてきたかと思ったら部屋を出て行った。足音とドアを開く音…私の部屋の位置からだった。ハチは私の部屋へ入っていったようだ。今のうちにさっさとベッドの下から、この部屋からでなくては!ソロリとなるべく音を立てずに部屋を出た後、服についた埃を払う。同じように静か〜に私の部屋へと向かう。ドアがちょっとだけ開いていたので隙間からコッソリ中を覗くと…!!名前と言いながら私の下着を嗅いでいるハチの姿が!!思わず大きな音を立てて後退りしてしまった



「っ!?名前!?」



し、しまった!逃げなきゃ!今ハチの前で冷静に話せる自信がない。私の名前を切なそうな声で呟きながら下着を嗅いでいた弟を、立花のせいで自分の都合のいいようにしか捉えられないからだ。ハチは変態だから姉とかそういうの関係なく下着をハアハアしていただけなんだ!それだけ!それだけなの!たとえ私を姉ちゃんではなく名前と名前で呼んでいたとしても!変態だから性的欲求を満たすために嗅いでいた!ただそれだけ!



「…見た?」

「な…なにを…」

「なにって…俺が姉ちゃんの…その…」

「…み、見てないよ!私はただここでスッ転んだだけ!」

「白々しいんだよ見たなら見たって言えばいいだろうがバカ!」

「ごっごめん見ました!下着を広げたり嗅いだりしてるところ見ました!」



そうだハチのくちから直接聞けばいいんだ。そうすればいつもの冷静かつク〜ルなお姉ちゃん名前に戻ることができる。言ってくれ八左ヱ門、お前が私の下着を嗅いでいた理由。それはお前が変態だから、下着を嗅いで満足したかったから。決して私自身を意識していたわけではないと、言ってくれ



「ははは、ハチは変態だから下着で遊んでたんだよね」

「…俺は…」

「そうでしょ!俺は変態だから姉のパンツで遊んで興奮してたって言えよ!」

「そうだけど、そうじゃない」

「そうなんだな!うんわかった!うん!そういうことなら姉ちゃんはハチの靴下一枚で勘弁してやる!よし…じゃあ今からご飯つく」

「そうじゃないって言ってんだろ!」



流されてくれよ!なんでそこで強く否定しちゃうの!今からご飯をつくっていつもの竹谷家に戻ろうとしたじゃないか、なんで邪魔するんだよ



「姉ちゃん、これはたとえばの話だ」



たとえば、仮に、もしも、だとしたら。



「俺が姉ちゃんを好きだったら、どうする?」



どうにかする気力がいま残っていない。立っているのだって辛い、呼吸だってすごく苦しい、胸が熱くて心臓がキュッてなってる、ハチの顔が見れない。なにこの展開?急すぎるんじゃない?どこでフラグ立ったの?立花との会話?あいつ!泣かしてやる!



「自分のこと変態、って言ったけどそれは姉ちゃん限定だったらどうする」

「毎晩姉ちゃんのこと考えて姉ちゃんに欲情して興奮してたら」

「姉ちゃんのいないところで姉ちゃんのこと名前って呼んでたら」

「もう名前のこと姉としてなんて見れないって言ったら」

「好きで苦しくてたまんないって言ったら、名前はどうする」



おい私にも発言する隙を、時間をくれよ。それ面白いたとえ話だねハチが考えたの?いやぁ本当に面白い笑えるよ。エイプリールフールに話してくれたらもっと面白かったかもね!姉ちゃん大爆笑間違いナシだよ!それとね、冗談を言うときはもっとユルい感じじゃないとさ、そんな真剣な顔で喋られると本気かななんて思っちゃうでしょ?そんな勘違いされたら困るでしょ?だから、ね



「あはは、ハチってばたとえ話うまいねぇ」

「…はは、たとえ話じゃなかったらどうする?」

「あは…は?」



ハチが私の肩をぐっと掴んで顔を近づけてきて吃驚する暇もなく唇と唇が触れて重なってああこの感触は初めてじゃない気がするでも今思い出してはいけない気がする。抵抗しようとしたらハチの手が私の後頭部にまわりグッと押さえつけられた。一体どれくらいの時間こうして過ごしているのだろう。すごくすごく時間が長く感じる。ふ、と唇が離れたのでなにすんだバカと言ってやろうとしたらまた唇で塞がれた。さっきからハチは私の発言権とか、そういうものを無視しすぎじゃない?唇やわらかいじゃない?あったかいじゃない?……違ういまはそういうこと考えてる場合じゃなくて!まともなこと考えようとしてもこの甘美な感触に邪魔される。気持ちよすぎてもう足がガクガクだ



「ひぁ」



我ながらアホみたいな声がでた。だってハチが私の服の中に手を入れたりするから!だがお陰で目が覚めた。ハチの足を思い切り踏んづけてヤツが痛がっている間に逃げ出す。ど…どこへ逃げる!?トイレ!?お風呂場!?外!?これがダメだった。一瞬の迷いが私の足を止めハチに追いつかれてしまった



「逃げんな!今日はぜってー諦めねぇからな!」

「諦めてくれよ…!なんでキスとかすんの?そういう空気じゃなかったでしょ!」

「そういう空気ってなんだよ!?空気なんてつくってる余裕ねーんだよ!名前!」

「ひん」



限界がきてしまう。私がハチの姉として振舞えなくなってしまう。今まで頑張ってハチの前だけではと被り続けていた仮面が壊されてしまうよー!うわあああ!



「す、好きだ!家族的な意味じゃなくて!一人の女として!しゅきらッ」



ハチが噛んだ
私の姉としての薄い仮面は跡形もなく爆発した

 



あきゅろす。
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