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ヒルダ(TOR)

 君の瞳に僕は写っている?
 君の心に僕の居場所はある?

 僕は太陽にはなれないけれど、小さな光になろう。君を照らし、闇から君を救う光になろう。いつかきっと君が僕を見てくれるように。その心に僕を息吹かせて。




 頬を冷たい風が通り抜けた。遠く山々を見渡せる小高い丘の上。今にも崩れそうな天気の下、君はずっと立ち尽くしていた。

 何を思っているの?
 誰を思っているの?
 僕の事なんてもう忘れちゃった?

 少し離れた木の下で、僕は腰を下ろして木の幹に背を預けていた。揺れる君の髪を見つめながら僕は胸が痛んだ。
 何も言わずにただ隣にいること。
 最初はそれだけで嬉しかった。
 君が僕を必要としてくれているのだと思ったから。でもそうじゃなかった。君はいつでも僕の隣にいたけど、心はそこにはいなかった。君は確かに僕の目の前にいるけど、その心はどこか遠くを旅している。その心に僕は辿り着けない。

「ヒルダ」

 小さく呟くような僕の声に君は気付くことはない。微動だにしないその背中に胸が締めつけられる。

 近くて遠い。

 手を伸ばせば届くのに届かない。
 君を捕まえても、君の心までは捕まえられない。そんなの虚しいだけだ。
 不意に君は振り返った。少しだけ微笑みを浮かべた君の表情に僕も小さく笑った。ゆっくりと立ち上がって僕は君の隣にたった。
 見据える山々は青々しく雄大だ。ちっぽけな僕らを圧倒するように佇むその風景に僕はしばし閉口した。

「あなたの隣は落ち着くわ」

 ただその一言で全てが報われたような気がした。

 少しずつでいいから君に近づきたい。
 だから今は君の隣で君だけの太陽でありたい。


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あきゅろす。
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