織姫(脱色)
全てが終わった時、全てが始まった。
見上げた空は真っ青で、飛行機雲がくっきりと後に残っている。いつからそうしていたのか……覚えてないけど、きっと長い間そうしていたんだと思う。不意に声をかけられた。
「あの……何をしているの?」
振り向けば、茶色の長い髪を持つ可愛い女の子が立っていた。どこか抜けた感じのあるのほほんとした少女で……俺は少し安心したした気持ちになった。俺がただじっと彼女を見つめていると、
「さっき……2時間くらい前にここを通った時もずっと空を見上げてたよね?」
「そうかも」
2時間……最低でもそれくらいはずっとここに突っ立ってたのか。少し苦笑しながら答えると彼女は首を傾げている。
「もしかして……UFOでもいたの!?」
至極大まじめに彼女がそう聞くもんだから、俺はつい吹き出してしまった。
「あれ?違った?」
「もしかしたら通ってたかもね」
なんて適当に言ったら彼女は慌てて空を見上げてきょろきょろしだした。
天然?そんな光景がおかしくてしばらく傍観していた。
「あ〜やっぱりそう簡単にUFOには会えないか〜」
「UFOに会いたいの?」
「うん!」
そんな笑顔で言われたら笑いとばそうにも気が引ける。だからただ微笑むことしかできなかった。
「あ!もうこんな時間!!笑点が始まっちゃう!」
笑点……?
腕時計で時間を見ると焦りだした彼女は、ちらりと俺を見た。
「ねぇ、またUFO探す?」
「そう、だな」
「じゃあまた明日ここでね!」
「分かった」
いきなりの提案だったけど、拒む理由も無いし、気がついたら肯定の返事をしていた。彼女は満面の笑顔で俺の返事に頷くと、走り出した。
「また明日ね〜!」
途中で振り返って大きく手を振ってそう言うので、俺も手を振りかえす。
もう日は傾いていた。
青空は茜色に染まり、影は長くのびている。
風が頬をかすめていった。
不思議な人だった。
ただ立っているだけなのに……何故か目が引きつけられた。
その視線の先が気になった。
話してみたらやっぱり不思議な人だった。
でも笑顔が素敵な人だった。
自分でもびっくりした。
何であんな事言ったんだろう。
でも……明日がすごく楽しみ。
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