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♭高荷恵(るろ剣)

「また貴方なの」

 不機嫌な表情を隠す事もなく、それこそ机に肘をついた状態で高荷先生は溜め息とともにそう言った。私も暇じゃないのよ?と言いながら診断書にペンを走らせる。

「それで?今日はどうしたの?また腹痛?」
「いいえ」
「それじゃあ怪我、はしてなさそうね」
「はい。無傷です」

 それじゃあ一体なんなのよ、と眉間に皺を寄せて俺を睨む高荷先生。俺は患者なのに、と思いつつも毎日特に病気してる訳でもないのに通い詰められればそんな対応にもなってしまうだろう、と他人事のように考えていたら、

「何でもないならすぐに帰りなさい。患者は貴方だけじゃないのだから」

 突き放す訳でもなく、優しく諭すような言い方。でもそれは子供扱いされているみたいで嫌だ。事実……高荷先生から見たら俺なんてガキなんだろうけどさ。

「先生……」
「なに?」
「胸が痛いんだ」

 そう。貴女を思えば思う程締め付けられるように痛む。どう表現したらいいのか分からない胸の奥がざわついて全身を刺激するような……それでいて嫌じゃないこの胸の痛み。そう説明したら、高荷先生は一瞬目を見開いた後、おかしそうに笑った。

「それは恋の病ね」
「恋の、病?」
「ええ。子供のくせに私に恋をしたの?」

 さも愉快だと言いたげに高荷先生は笑うと深く落ち込んだ俺の肩に手を添えた。ふと顔をあげれば交わる視線。頬が熱を持つのがよく分かった。

「貴方がいい男に成長したら考えてあげてもいいわよ?」
「!」

 俺はまんまと高荷先生の策略に乗せられただけかもしれないけれど……でも諦めないさ。まだまだ勝負は始まったばかりなんだから!


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