♭ラクス
「君を傷つけるものは全て僕が壊すんだ」
貴方は真剣な瞳でそう言って、小さな手で……それよりも小さな私の手を握りしめた。この言葉の意味を、きっと貴方も私も深くは知り得なかったのでしょう。幼い恋心を言葉で表した時……それだけが唯一で絶対の真実の言葉。
二人眺めたプラントの空は今も変わらず私の頭上に流れています。
二人並んで歩いた庭も変わらず美しい花を咲かせています。
でも貴方がいないのです。
何よりも……
誰よりも……
愛しくて恋しい貴方がいないのです。
「私は……」
貴方が居て下さればそれでよかったのです。
貴方が居て下されば、どんな悲しみも苦しみも乗り越えていけるのです。
知っていましたか?
私の笑顔は貴方がいるから生まれる、という事を。
気付いていましたか?
貴方が私を想うよりも深く私が貴方を愛していた事に……
「お別れは言いませんわ」
この土の下に貴方はいないから。
だから泣きませんわ。
だから悲しくはありませんわ。
貴方は今もどこかで戦い続けているのですか?
それならばもう必要ないのですよ?
もう貴方が戦う理由はないのですよ?
「貴方が私の悲しみの理由になってどうするのですか」
誰が私の涙を拭ってくれるのですか?
誰が私を抱きしめて癒してくれるのですか?
貴方しかいないのです。
風が髪を遊ばせて、視界を遮った。かきあげた後に一瞬だけ儚く墓石に浮かんだ面影に……残酷な現実を突き付けられたようで、一筋の雫が頬を濡らした。
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