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♭ステラ

 浮かぶ雲はゆっくりと流れて明日へと続く。光は今も俺を照らしてくれるけど……俺の明日を照らしてはくれない。
 何かに縛り付けられて。
 何かに追われる毎日を繰り返して。
 俺は何処に行き着くのだろうか?そして果てない闇の終着点が『死』だと気付いた時に……俺は何を憎み、嫉み、生への執着を見せる事が出来るだろうか?
 何も出来やしない。
 無力な俺は何も……。
 風が背中を撫でた。ふわり、と頬にかかるくすぐったい感触。空と海の青に映える金色の世界。

「海は好き?」

 脈絡のないステラの問いに今までの思考は停止されて、俺は少し面食らった顔で彼女を見た。後ろから抱き着いている彼女はただ無邪気に微笑んで俺の解答を待つ。
 ああ……こんなにも緩やかで穏やかな時間がまだここに残っていたのだ。今はまだ何も知らなくていい。今はただ君と過ごすこの時間を……

「好きだよ……大好きだ」
「うん!ステラも大好き!同じ!」

 きゃっきゃっと嬉しそうに何度も繰り返し、そして俺を抱きしめる。
 それがただ愛しい。


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