抱きしめて欲しい、そう君は言った。
ただその一言だけ。
涙をためた瞳は俺なんか写していないんじゃないかと思える程に揺れていた。拒む事など出来るはずもなく……俺はただ君を抱きしめた。
小さなその体は思ったよりも簡単にこの胸におさまって、背中に回された細く小さな手は何かを必死に繋ぎ止めるように強く俺を抱きしめた
何があったの?
そんな事さえ聞けずに俺はただ君を抱きしめて……涙の理由を聞く事よりも今は俺を頼ってくれた事が嬉しくて……。
ああ……俺はなんて小さな人間なんだろう。
君の涙一つ拭えないなんて。
「フレイ……」
名前を呼ぶだけで精一杯の俺を許して。
だけどね……俺は本当に君を想っているんだよ?
大切過ぎて何も出来ない、そして言えない。
「……」
分からない。
未だ泣き続ける君を俺はただ抱きしめる。
君が一番近くにいるのに……一番遠いんだ―――…。